第十一話 炎霊グリエお爺ちゃん
あらすじ 双子姉妹もニーダさんも怖い 以上!
その先はアホな俺でも解った。
人々にとって単純に霧は化け物を生むだけの物ではないと、生物全て平等に霧にとり憑かれるということは明日はわが身なんだ。
それだけではない、モラセスの「殺す」ことは出来るとは―――逆に殺すしか対処がない。
たとえ
親だろうと
子だろうと
愛する人でも
友達でも
誰がとり憑かれて殺し殺されるのだろう。
誰かを傷つける恐怖と殺さねばならない恐怖。
霧は昔からあったのなら、その昔から積もる悲しみがあると思う。
おれ自分のことだけ、しか考えてなかったな…。
もし、おれがこの世界の人間だったらって、もし、逆にこれがおれの世界(地球)だったらて考えた。
先頭からモラセス、続いてニーダと双子姉妹に左右挟まれた俺の後ろにカラクが神殿に向かうために歩いている。
王宮の奥へ案内された大きな純白の扉の前、白は女神の象徴なんだと。門の上には真っ白い髪をした女神の絵が飾られていた。女神は世界樹と人間と動物と植物を包み込む様に描かれている。
絵の中の女神は慈しみの眼差しをもって空と大地を抱きしめている、なのに実際の俺は何だ?でも本心は帰りたくて…。人として俺ちいさくねぇ?
それなのに周りの人は俺を大切にしてくれる、特にカラクには散々わめきワガママや文句を言ってきた。
期待に値する全知全能の女神ではないととっくに気づいているだろう。
モラセスだって帰れないとか適当なことを言えばいくらでも俺を地球へ帰すのを阻止できたと思う。でも、俺の意思を最優先にしてくれている。
あーっモヤモヤしたのが俺の胸で燻っていた。
***
王宮に仕えている兵士が俺達のために神殿の扉を開き。神殿の中は白一色、まず目を引くのは中央に置かれている巨大な炎。
金属で出来たワイングラスのような容器に炎が浮き渦を巻いて燃えていた。そして炎の上には巨大な黒ずんだ玉が鎮座している。
光喜は玉に指を指し聞く。
「あれって?」
光喜と同じく玉を見ていたニーダは頷き。
「さよう、原罪の霧を封じ込めた封玉にございます。我々は霧を浄化することは出来かねますが、こうやって封印するかもしくはとり憑かれたモノを殺める事は出来ますのじゃ」
玉は禍々しい色で空中に停止してまるで光喜を待っているかのように醜くも美しく炎の明かりで輝いていた。
「もう一つ質問、じゃあ…原罪の霧にとり憑かれたものを殺したとしてその霧も一緒に消えるの?」
ニーダは左右に首をふる。
「霧は本体から離れまた次の肉体を捜し彷徨うのです。しかも厄介なことに霧は一つとり憑くと周囲の霧を引き寄せて自らを巨大にしていき更に力を得る、ほっておくと益々手のつけられない自体に陥ってしまいます」
だから封じるのか、これ以上大きくならない様に。
光喜が封玉を見つめているとドクンと大きく心臓の音がなる。
ああ、やばい!これ、この感じ…鶏が霧にとり憑かれて暴れていた時に感じた興奮だ…。
俺が霧を求める、霧が俺を求めている。
ドクンドクンと高鳴りが大きくなり、一番後ろにカラクが俺の肩を掴み振り返させた。
「大丈夫か?」
「うん、俺の剣が欲しいアレ(霧)が呼んでる」
素直にカラクに頷く光喜にカラクは待っていろというと神殿の扉から出て行った。剣はドレスに着替える際に俺が着ていた服と一緒に案内された部屋に置いてきた。
「「光喜様」」
双子姉妹が心配そうに此方を窺ってきているがニカっと笑い。
「大丈夫、大丈夫なんでもないんだ。ちょっと霧を前にしたら興奮しちゃうみたい」
興味深げにニーダは。
「やはり女神様と霧は共鳴するのでしょう」
モラセスも封玉を見つめ、言う。
「あれは300年前に封じられた玉だ、いい加減あちこち綻びが出来てもおかしくない。まったく良い時に女神殿が来てくれたものだ」
肩を揺らし笑うモラセスに光喜が問う。
「あの中にとり憑かれた生き物がいる?」
「ああ、確か記録には赤子だったそうだ。手に負えなくなって赤子ごと封じたとさ」
眉を光喜がひそめる。
「生きているのかな?閉じ込められた赤ちゃん」
「俺が知るか、ただ此処に納められるまで街を二つ潰したとしか記録には残ってない」
暫し沈黙が落ちる、光喜が黙ったら周囲も黙った。ただ今はカラクが剣を持ってきてくれるのを待つだけ。
≪やっときたか、待ちくたびれたわい≫
無心で封玉を見つめていると誰かが光喜を呼ぶ声が聞こえた。
「…?…何か言った?」
皆を見るが皆不思議そうな顔をした。どこからだろうと周囲を探るも当然のごとくモラセスとニーダと双子姉妹以外ギャラリーは存在しない。
≪ちゃうわい、こっちじゃ≫
「やっぱり聞こえた!誰だよ」
聞こえた声は低音で年をとった男の声、こっちって言われてもどっちだよ!焦らすな爺声。
≪封玉の真下におるわい、いま爺って言ったか?≫
封玉の下は……カップから燃える炎、まさかカップの中で燃えている人が居るとかホラー展開やめてね。
カップの炎が突如火柱を立てて高い天井まで届く、すると火柱は蛇のように先を光喜に向かって曲げて光喜に迫った。
モラセスが女神と双子姉妹は光喜様とニーダは女神様と一斉に叫んだ。
真後ろからは。
「光喜ーーーっ!!」
血相を変えたカラクだった。片手には俺の剣、そりゃ驚くわな?戻ってきたら俺が炎に襲われそうだし。
あっ?アイツがあんな顔するの結構レアじゃない?とか光喜は一瞬おもってしまった。
≪思ったより冷静じゃわい≫
今度ははっきり聞こえる、というか囲まれている…炎に。
炎はグルグル俺を中心に周囲を輪になって回ってた、不思議に熱いとかない。
「なんだよ!誰だあんた?」
≪ショッキングじゃったか?お茶目じゃろ?≫
そう爺声の言うとおり俺は自分でも不思議なほど冷静だった、勘で俺に危害をくわえる存在ではないとわかった様な気がしたのだ。
≪爺ッてよぶでない!!お爺ちゃんと呼べ≫
「うっせ!爺!何者だって聞いてるんだよ!!」
あとショッキングって単語たどたどしかったぞ、使い慣れてない言葉を使うって。
≪ワシか?お爺ちゃんはな、炎霊グリエじゃわい≫
「しらん!!」
≪せっかくお爺ちゃんが力になってやろうと…冷たい女神じゃわい…≫
炎からちょっと拗ねた声が響く。
「どうもスミマセンね、力って何してくれるの?」
≪そうじゃわい、お爺ちゃん達ととっくに契約はしているのじゃが、なんせお爺ちゃん達は封玉の封印の魔力を支えとんじゃわい。ちゃっちゃっかアレを浄化してお爺ちゃんを此処からだしてくれんかい?≫
でも綻びってる話じゃん?サボるなよ。
≪やかましい、ワシらが封印したわけじゃないわい、ワシらは魔力を提供しているにすぎんのじゃわい≫
「了解、なんかよくわからんが浄化はするつもりだったよ」
≪ほれ、手伝ってやるから大人しくしてるんじゃよ≫
光喜を取り囲んでいた炎は動きを止めて光喜の体を持ち上げる様に炎は光喜を抱き上げた。
炎の壁が大人しくなると皆が驚いた顔をしてこっちを見つめていた、驚くなってのが無理だろう。
進みませーん、文才が欲しいです。そして光喜が悩んでいますが暫しお付き合いくださし。
 




