4時間目 MPとマナの違いくらい知っときなさいッ!
ほら、チピチピチャパチャパうるさいわね。
口を閉じなさい、烏合の衆。
授業を始めるわよ。
早速だけど、みんなは”MP”って知ってるかしら?
「もこもこパンツ! もこもこパンツ!」
死になさいマイケル。
穴などに落ちて死になさい。
MPっていうのは、ファンタジーで出てくる、魔術を使うために消費する魔力の事。
じゃあこのMPって本質的に何なのか、どこにある物なのか。考えた事はあるかしら?
どうせ無いでしょうから、今日はイチから教えてあげる。
MPに似たものの例として、まずは”マナ”について説明するわ。
ハワイ、ニュージーランド、ニューギニア……あの辺の人々が信じる”宇宙の根本エネルギー”がマナよ。
マナはとにかく宇宙の全てのものに宿っているの。
人間や動植物、山や川、人工的に作った道具、死霊にも宿っているわ。
基本的に、『大量のマナを持つものは強力』という事を知っておいて。
マナの多い槍を持てば強くなるし、マナの多い人間は立派な働きをする。
だから部族の酋長や王様なんてのは、相当の量のマナを持っていたはずよ。
ところでみんなは、ハワイ諸島を統一した”カメハメハ大王”を知っているかしら?
「ハ、ハメハメ……? うっ」
「うっ」じゃないのよマイケル。
かわいそうに。きっと耳か脳、もしくは性根が腐っているのね……。
カメハメハ大王のお墓の場所は秘密にされていて、今でも見つかっていないのよ。
これは、誰かがカメハメハ大王のマナを奪うのを恐れての事。
だから今も見つかっていないというより、マナを重んじる文化を尊重して『積極的に探そうとしない』という側面が強いわね。
どうやってマナを他人から奪えるのかって?
一番簡単な方法は、影を踏むこと。
だから昔のハワイでは、『王の影を踏んだものは死刑』という決まりがあったくらいよ。
そして、このマナを自由自在に扱う事が魔術。
古代ハワイの魔術師は、保有する大量のマナを駆使して様々な技術を扱っていたわ。
回復、予言、天候操作、恋愛成就などを行う者から、大工、染色、カヌー造りといった専門技術職まで、様々な分野の魔術師がいたの。
ちなみに魔術師レベルになると、息を吹きかけたり、唾液を与える事で他人にマナを分ける事もできたらしいわよ。
はい、マイケルどうしたの?
「僕にもマナってあるんですか?」
あなたのはなんか臭そうだけど、あるっちゃあるはずよ。
「マナを上手く使えば、女湯に忍び込んだりも出来るんですかね? えへへ、えへへ」
そういう間違った使い方をすると、神の怒りに触れてマナを失うわ。
マナを失うという事はつまり、全ての才能を失うという事。
自業自得ね。
他にも、自分に向いてない職務にマナを使ったり、神への祈りを怠ったりすると、マナを喪失するから要注意。
ファンタジーで僧侶キャラが毎日祈りを捧げているのは、そんな背景によるものなのかもしれないわね。
次は、マナに似た概念である”気”について。
房中術の授業で少し触れたけど、”気”は中国魔術で最重要の概念よ。
陰陽説に五行説、仙術でも占術でも、”気”の存在を前提にしない物は無いの。
”気”は宇宙に充満する森羅万象の構成要素であり、気体や液体の様な流体でイメージされる物。
科学で言う”原子”や”粒子”と近い部分があるわね。
人間の身体も勿論、大量の”気”が凝固して出来ているのよ。
と言っても、みんなも”気”という言葉は普通に使うでしょうから、特に説明は要らないかもしれないわね。
「Sっ気とか? Mっ気とか?」
そうそう。
「淫気とか、艶気とか?」
そういう言葉ばっかりよく知ってるわね。
きしょいわ、マイケル。
「エロ気とか?」
それはたぶん”色気”だと思うわ。
他にも、『気が付く』『気がある』『気が滅入る』といった言葉はみんなそんな感じ。
もっと魔術寄りの表現だと、『気の流れが悪い』とか『悪い気を吸う』とか言ったりするわね。
ファンタジーでも”気”は”気”という名称のまま使われる事が多いわ。
悪い気の事を分かりやすく”瘴気”や”邪気”と言ったり。
明確に数値で増減するMPよりは、”魔力”や”エネルギー”など、曖昧な表現の方が近い意味で使われるわね。
『元気』『活気』という言葉があるように、HPに近い意味合いも持っているから、使い方の幅はかなり広いわ。
最後に、”チャクラ”について。
有名な漫画”NARUTO”のおかげでチャクラは有名になったけれど、実はその意味はかなり誤解されているのよ。
チャクラはMPのようなエネルギーではなく、身体の中に存在するエネルギーの集積所の事。
だから言わば”臓器”に近いわ。
性器と肛門の間──俗に言う”蟻の門渡”の部分を第一チャクラとして、そこから生殖器、へそ、心臓、喉、眉間、頭頂部と、正中線に沿うように全部で七箇所のチャクラがあるの。
そしてチャクラは下から順に地、水、火、風、空と関係があるとされ、眉間にある第六チャクラは心、頭頂部の第七チャクラは宇宙精神に繋がるという事になっているわ。
この辺はもしかしたら、ヨガとかに興味無い人には難しいかもしれないわね。
そうそう。
2時間目の授業で解説した”股間の蛇”が上っていく道筋がまさにこれよ。
忘れちゃった人はきちんと復習しておいてね。
ここまで”マナ”、”気”、”チャクラ”について説明したけれど。
それぞれに特徴があって、使い方や存在する場所が違う事を分かってもらえたかしら?
どのエネルギーも、使い方によっては心身共に凄まじい効果を発揮するわ。
もし何かあっても先生は責任取れないから、くれぐれも使い方を間違えないようにね♡
評価ポイント入れてくれたらとーっても興奮しちゃうわ♡