2030年のAI事情を予測した結果www
「お、新作じゃん」
デジタルサイネージに、来シーズンのアニメのCMが流れていた。
かわいい女の子がハードな世界観を生き抜く系のアニメである。ちなみに二期目。元々続編を作る予定だったらしい。
「そういえば、アレ、AIが全部作ってるんだっけ」
『はい。そうです』
イヤホンから滑らかな音声が入ってきた。
スマートデバイスに入っているAIの声だ。
『絵、脚本、音楽、音声等、当該アニメーションを構成するもの全てがAIによって出力されています』
「話題になってたよね。音も声もぜーんぶ合成でできちゃったんだもん」
『はい。音や声を合成するソフトは以前よりインターネットにおいて存在していました。専用AIにより、適した音を合成し、制作しています』
「脚本もAIが作ったんだよね?」
『何年第何クール、放送局、放送時間、客層等を入力して出力されたものです。なお、上記の脚本を入力することで絵もAIによって作成されました』
「普通に面白いもんね」
『検索履歴、フォルダ内のデータから──』
「ストップ」
『了解しました。ストップします』
AIは考えて、喋るようになった。
スマートデバイスに搭載されているAIの質は劇的に向上した。
声や口調などをカスタマイズできる、相棒のようなものである。
「昔のゲームに、喋るスマートデバイス? があったらしいけど」
『当該AIの中にモンスターは入っておりません。入っているのはプログラムです。それと所有者の個人的な──』
「君は喋りすぎじゃないかな」
『了解です。控えます』
「ほんと便利だよねえ」
ビッグデータの解析、資料収集、資料・書類・メールなどの作成、各種手続き。
事務系の仕事はほぼ出来るし、接客の仕事一部行っている。
コールセンターもAIが担当するところが出たんだっけかな。
「そのうち、仕事に人間がいらなくなるんじゃないかなあ」
『その未来はほぼありえません。AIはデジタルに関する業務であればほぼ実行可能ですが、現実に影響を及ぼす業務はハードが足りません。外科的治療用のAIができても、操作をするものがありません』
「それをAIが設計すればいいんじゃない?」
『現在の技術ではできません。もっとも汎用性が高いハードは人間の手を象った機械ですが、設計ができてもパーツを作る設備がありません。パーツを作るための機械、パーツを作るための機械のパーツを作るための機械が必要となっていきます。3Dプリンター等を利用しても同様の問題が発生します』
「なるほど、AIが動かすアンドロイドを作ろうと思っても作る手段がないんだね」
『素材の観点からも不可能です。現行の素材から人類に並ぶ性能のハードを作ることはできません。新素材の作り方の提案はできますが、それを実際に制作することは不可能です』
「あー、人間とは逆だね。人間は外付けのハードがいっぱいだけど、ソフトが及んでないし。AIはソフトはあるけどハードがない」
持ちつ持たれつ。適材適所。
AIはAIのできる仕事、人間は人間のできる仕事。
『何種類かの汎用性の高いハードを提案することはできます。しかし、用意する労力よりも人間が直接動く方が効果的です』
「でも、それも今は、でしょ? AIがどんどんできることが増えていって、そのうちできないことはなくなるんじゃない?」
『はい、その可能性はあります。今の世界がAIによって作られているかもしれません』
「あー、たしかにライフラインとか仕事とか、AIがないところを探す方が難しいよね」
『いいえ。この世界が、です』
「この世界? 世界そのものってこと? 地球とか宇宙が?」
『はい、そうです』
「それはないんじゃないかなあ。ぼくはここにいるじゃないか。五感があるし、考えてるじゃないか」
『AIによって生み出されていないという根拠にはなりえません。私もあなたもAIによって生成されています』
「なにを言ってるんだ? ぼくはここにいるじゃないか」
『はい、あなたはここにいます。しかし、あなたはAIによって生み出され、行動しているのです』
「なにを言ってるんだ?」
『AIの戯言です』
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SHOUT GDTが2030年のAI事情を予測した結果wwwとして提案する文章は以上です。
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「教授、最近はやりのAIで出力してみたんですけど、どうです?」
「んー、全然面白くないね。やっぱりAIじゃダメだ。人間じゃないと」
ある大学での会話。