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継ぐ者  作者: 犬神弥太郎
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思惑

 王都の土産物店は、品揃えが凄まじい。


 様々な商品がならび、なにがなんだかわからない。


 特に特産品があるわけではないが、とにかく色んな物が売られている。


 薬屋にいけば、ラースニアの妙薬まで売っている。


 装飾品等も、鍛冶師のか、それともそのデザインをしたものかのサインが入ってるものもある。


 何をどう選んで良いかわからない。


 下手に趣味だけで選べば、王都じゃなく、他の場所に行ったと思われかねない。


 人間世界全ての特産品が、ここに来れば手に入るんじゃないかというくらいだ。


 王都だけで売られているものというと、それは、装飾品になる。


 宝石等は産地が違うだろうが、デザインをしている人が王都の人ならば、王都のものとなるはず。


 レイモンドは、とにかく土産物で悩んでいる。


 父親や母親になどは日持ちのする食べ物でも構わないと思うが、シュリアとリリにはそうもいかない。


 ファリスに意見を聞いてもいいが、レイモンドが選んだと言わないとシュリアは絶対に怒ると思っている。


 しかし、レイモンドはこういうたぐいの物を選ぶのが苦手だ。


 ラースの町でシュリアと買い物をした時も、ほとんどシュリアの荷物持ち。


 今背負ってるバックパックでさえ、シュリアが選んだ物だ。


 行商の真似事で稼いだ分は多少使えると土産物屋に入ったものの、目が回っている状態。


 そして、何も買わずに店を出てしまう。さっきから、何度もそれの繰り返し。


 戦うことよりも疲れる。しかし、レイモンドは楽しかった。


 誰かに喜んでもらうものを選ぶのは、楽しいと感じる。


 やはり平和な日常が一番だなぁと感じている。


 時たま、感知出来る範囲を広げてはいるが、異形のモノの気配はない。


 ファリスの耳にも、異形のモノの声や音は聞こえないらしい。


 レイモンド達が入る店にもよるが、店員や客などは嬉々としてるものと、戦々恐々な者と様々だ。


 勇者が現れたことと、勇者とともに戦う姫の噂。


 ルナは勇者とは別に、姫と呼ばれるようになっていた。


 そして、勇者は勇者のままだ。その部分はレイモンドは安心している。


 自分とバレていないことで、普通に暮らしていける、と。


 戦々恐々なのは、勇者が居なくなったことで、また異形のモノが来るかもしれないと怯える者。


 怯えながら、なんで土産物店にいるんだろうかとレイモンドは不思議がるが、まあ、個人の事情だろうと放っておく。誰か人が居るところに居たいんだろうなという、勝手な納得だ。


 そして、共同戦線したことによる、勇者と姫の恋物語が、大きな噂となっている。


 共同戦線なんてしたっけかなとレイモンドには記憶がないが、王都の中で外が見えない状態では、レイモンドとルナが別の所で、別の敵と戦っていても共同戦線なのだろう。


 恋物語な時点で、どうしてそうなるのかとも思うが、それは噂話ならではだろうか。


 大体、ルナという姫が、ルナティアルグ・レヴィアスだというのも解っていない。解っていたとしても、王宮であった時にも顔も見ていないのだから、誰だか想像もつくはずもない。


 あの時のファリスと同じ目をしてた女性騎士かなと思うも、それが誰か解っていない。


 まるで根拠の無い話が、尾ひれとなってこじつけられていっている。


 レイモンドは早く帰って、噂を否定したほうが良いなと思いつつも、ファリスをどうしようかと悩んでいる。


 既に行き場がないと言われているので、連れ帰るしか無い。


 村に連れ帰っても、自分の家で養うしか無い。


 リリと同い年くらいだから、気が合えば良い友達か姉妹の様になってくれるだろうと期待するしか無い。


 色々と抱えて、しかも、選択肢がない。


 めんどくさいと感じるが、しかし、それもまた平和だからだなと感じている。


 異形のモノが襲ってきてる状態では、そんなことは考える余裕も無いだろう。


 レイモンドが気づくと、ファリスの買い物袋が増えている。


 気づく度に増えている。


 どこにそんなお金を持っているのか、何を買ってるのか聞くに聞けない。


 シュリアの時と同じで、アレは多分自分が運ぶんだろうな、とレイモンドは苦笑する。


 王都からラースまでが10日、そこから3日程度で帰れるか。


 一人でならもっと早いが、しかし、ファリスが居る。そして、この荷物。


 さすがに、普通の移動を考えなければならない。


 レイモンドは何度目か、いやもう数十回目だろうか、王宮を見上げていた。


 父親は、王にどう思われているのだろうか、と。


 騎士道を外れたと思われていると、さすがに少し悔しさがある。


 今の道も、しっかりと父親が見極めて決めた道だろう。


 父が人として決めた道。しかし、それが騎士としては間違っているのだろうか。


 人としての道を選んだ故に、騎士道から外れたのだろうかと思うと、騎士道とは何かと思ってしまう。


 自分を選んでくれた故に、騎士道から逸れたとするならば、自分はしっかりと将来を見すえないとと考える。そして、今まで自暴自棄に命をかなぐり捨てるかのように戦っていたことを思い出して、自責の念を感じる。


「レイ様、なんかずっと百面相してますねぇ。なんか意外です」


 ファリスの方を向くと、また違うのを食べている。


 近くにある出店の菓子らしい。甘い匂いがキツい。


「そんなに変な顔してた?」


 レイモンドは苦笑してしまった。顔に出ていたらしい。


「色んな方を向く度に、色んな表情してましたよ。ゆう……えっと、戦って……じゃなくて、えっと」


 言葉選びに大変らしい。


「いろいろ意外でしたけど、素敵です」


 よくわからない言葉の結び方をしてきた。


「気を遣わなくていいよ」


 レイモンドは立ち上がると「さて、土産を選ばないとな……」と、またアクセサリーを売ってそうな店に向かった。


 ファリスが「そんなんじゃないですよ」と言いながらついてくる。


 荷物はレイモンドが大半は持っているが、小さいもの等はファリス自身が持っている。


 レイモンドには、どの袋に何が入ってるかさえわからないので、扱いが難しい。


 昔、リリの荷物を動かした時に、お気に入りのカップを割ってしまって泣かれたことを思いだしていた。


「あ、そうか。ああいうのでいいか」


 ひとりごちながら、勝手に納得して歩いて行くレイモンド。その後をひょこひょこと付いて行くファリス。そして、装飾品ではなく、食器を売ってる店で、レイモンドはシュリアとリリの揃いのカップを買った。


 同じカップを、何気なく持ってるファリスが後ろにいる。


 レイモンドは結局、3つ購入した。


 そして、装飾品店でも、簡素だがなんとなく惹かれるペンダントがあったので購入。


 カップのデザインと似ているのがあったのだ。


 買うものが決まると、何気なく早い。


 買い物を済ませたという安心感で、また中央広場で休んでいると、王宮が目に入る。


 ルナに聖鎧を届けて数日。


 聖鎧を狙う者はレイモンドに気づかず、そして、聖鎧にも気づかなかった。


 しかし今は、王宮にある。


 ニアスの任務は、ニアスの手を離れたが完遂された。


 託されたわけじゃないが、事情を知ったら助けたい。そういう気持で持ってきたもの。


 まさか、王都で戦うはめになるとは思っていなかったレイモンドだが、それも行幸だ。


 全ての異形のモノを倒すと決めた時から、王都の周辺も狩り尽くすと決めていた。


 しかし、王都ならば、騎士達ならば、異形のモノを倒せると思っていたが、そうでもない。


 自分が化け物で、更に、異形のモノと戦い慣れてるというのもあるのだろうと思っている。


 しかし、人間相手では話が違う。


 人間を殺してしまえば、本当に自分が人間を捨てることになってしまうと思っている。


 そして、それ以前に、殺したくはない。


 だから手加減をするが、しかし、殺すのではなく戦意を失わせる戦いは難しい。


 レイモンドは、まだそれほど手練という程ではないのかもしれない。


 そんなレイモンドだから、聖鎧を人から守って王の元へと運ぶというのは、精神的にきつかった。


 人を相手にしないといけない場合があれば、自分はどれほどの危害を加えてしまうのかという恐怖。


 そして、人にある程度の実力を見られれば、顔を覚えられるという危機感。


 今いる場所で勇者の噂は散々聞いたが、顔を覚えられるような事をしていたら、大変だったろうとレイモンドは感じていた。横にいるファリスの様に、ついて来てしまったら困る。


 王都はまだ、異形のモノの襲来の余波が残っている。


 下手をすれば、この騒乱に乗じて聖鎧を奪いに来る連中がいるかもしれない。


 レイモンドが運び終えたかは知らないだろう。しかし、王都にあると予想して来る可能性はある。


 そこまでをレイモンドが心配することでもないのだが、関わってしまったことだ。


 なにか起きるのなら、自分が力を貸せることはやりたいと思っていた。


 そしてまた、王宮を見上げる。


 ただ、巨大な建物。権威の象徴なだけはある。しかし、シュリアの居たグレッグの村の付近でも、巨大な塔のようなものが海岸にあった。


 そういえば、アレには継ぎ目が見当たらなかった。


 なんとなく、思い返していると、いつの間にか警備兵に囲まれていた。


「なにかあったんですか?」


 レイモンドから警備兵に聞いた。


「いや、さっきから戻ってきては王宮を見てるからな」


 レイモンドは困ったように「王都は初めて来たので、王宮の凄さが気になっちゃって」と答えた。


 警備兵が「田舎から行商か」と聞くので、「ラースニアから、妙薬を」と、妙薬を見せた。


 この辺では、薬屋でも売ってる品だから通じるかどうかが微妙だなとは思っていた。


 しかし、警備兵はたいして気にもしてなさそうに、少しレイモンドと話をしたら離れていった。


 単純に巡回か、とレイモンドは安堵した。


 反乱軍が支配していた時は、気に入らないと処刑されたとも噂で聞いた。


 今はそんなこともないのだろうが、少し緊張はした。


 自分一人ならなんとでもなるが、ファリスがいる。


「そろそろ出発しようか」


 レイモンドがそう言うと、ファリスは素直に頷いた。


「じゃあ明日にでも」


 今からは嫌だという遠回しな言い方だな、とレイモンドは納得した。


 そして翌日にはレイモンドは出発し、王都を後にしていた。


 レイモンド達が旅立って数日、王都は何も変わらず、ルナは暇だった。


 父親が王が暇そうにしていて、相手をさせられると言っていた理由が、今やっと分かる。


 有能な人材が揃うと、ひとつの指示が滞り無く行われ、また、細部に渡って緻密に構成される。


 ルナの指示した単純な命令は、補佐や政務官達により各部署に最適化されて指示され、それが絶大な効果になる。


 時には大事になりすぎて、ルナ自身が止めることもあるくらいに、ルナの発言は重要視されていた。


 王が暇そうにしている。それは、口外してはならない。しかし、たまにはレヴィアスも愚痴を言う。


 家族の前だからだったろう。そして、ルナはそれの意味をしっかりと体感している。


 王が下手なことを言えば、王宮全てがその命令を完遂するために動き出す。


 今の政治の頂点はルナだ。そのルナの言葉は、在りし日の王に匹敵する。


 有能な政務官達は、後ろ盾であった富裕層からルナの切り離しを図っている。


 恐らくは旗印として、目立つ存在としてだけ、自分達のコマとしてのルナを求めていた連中は、勇者だの姫だのと言われ、さらに王政の中枢を担っているルナを使おうとするだろうと予想していた。


 そして、それは後ろ盾になった連中が、国を支配することになる。


 ルナを後ろ盾から切り離すことは、ルナが王を立てる時に邪魔になる障害を排除する事だった。


 そういう水面下の目論見が、もちろん後ろ盾の連中からも工作されている。


 有能すぎる政務官は、ルナを自由にし、考える余裕を与えてしまう。そうなれば、騎士道を尊ぶルナは後ろ盾のコマにならず、反目することになるだろう。ある程度削ぎ落とす必要を感じているはずだ。


 今のルナは後ろ盾を得ずとも、自らの存在で立つことが出来る。


 反乱軍が乱した世界を、正そうとしているのは、皆知っている。


 王政での騎士の娘としての旗印としてではあるが、自らの復権を目的ではなく、民衆の為に立ち上がった事も、既に知られている。


 だが、それ以上に、勇者とともに、王都を救った存在として。


 意図したことではあるが、それ以上に、ルナ自身が重要な存在になっていた。


 しかし、そんな事はルナは知らない。


 水面下で動く勢力の存在は、なんとなくは気づいているが、しかし、詳細を掴んではいない。


 反乱軍の残党や、はたまた、別の反旗を翻す者達でなければ、話し合いをしようと思っている。


 その時点で、自分の配下と後ろ盾が争っていると解っていないのだが、それが両勢力に自由を与え、逆に動き易すぎることが、疑心暗鬼にさせ枷になっている。


 人間世界の政治面での戦いは、力ではなくなりつつ有る。


 そして、危惧されるのは暗殺。


 だが、後ろ盾の連中も、政務官達も、まだルナを殺しても意味が無いと考えている状態だろう。


 旗印として、象徴として成長している最中のルナを殺しては、民衆の心を逆なでする。


 まだ安全。しかし、いつ手のひらが返るか解らない状態。それが、今の国政だった。


 そんなピリピリしている状態の上に居るはずのルナは、勇者に心を奪われている。


 自分が苦い顔をして、礼を尽くさずに会った相手とは思っていない。


 王都の外で、自分の命を助けてくれた勇者。


 その姿に、噂通りの強さに、そして、背中に。


 父親と重なる頼りになる背中を見た時に、一人の騎士としては有るまじき事に頼りたいと感じた。


 否定しなければならない感情。


 国を背負う今の自分に、有ってはならない感情だと、切り捨てようとする。


 だが、切り捨てようとすればするほど、その感情が有ることを認識させられる。


 会いたいと思った相手に会えた。しかし、その時の自分は情けない姿。


 騎士としてではあるが、死を覚悟してボロボロの姿だ。


 戦場で誰かと出会うならば、逆に命を賭してでも戦う姿は誇らしい。だが、ルナは相手にもっと違う姿で見て欲しかったと思っていた。


「ちがう、ちがうちがう……」


 頭の中に浮かぶ感情を、色々否定してるのがまるわかりだ。


 少女の様な顔と、騎士としての顔、そして、執政官としての顔。


 ルナはうまく使い分けが出来なくなっていた。







 ラースニアには、妙な占いをする行商は来なくなっていた。


 噂では、行商自体を辞めたらしい。


 何が有ったかを話さないことで、どこかで異形のモノと出会ったのではと噂になったのだ。


 異形のモノと出会い、そして、神風に救われる。


 ラースニアの伝説になりつつ有る。


 しかし、ラースニアの近くだからと、必ず何からも救われるわけではない。


 強盗や野党は出る。そして、荷物を置いて休憩していたら置き引きに会う等、問題はある。


 異形のモノの時だけ、神風は吹く。


 神風に救われた人の噂の中には、神風の中に少女を見たと言うものも居る。


 風の神は、美しいドレスの姿で神風を纏い、人を助ける。とかの噂もある。


 それを初めて聞いた時、シュリアは真っ赤になっていた。


 心のなかでは、腹を抱えて笑っていた。


「ドレス……ドレスって、ウェイトレスの制服なのに」


 声に出したい欲求を我慢するのに、顔が真っ赤だ。


 ただ、それを聞いたらレイモンドは喜んでくれるだろうかと考えると、別の意味で顔が赤らむ。


 そして働く女の勘。


「一人で帰ってくるはず。だけども、なんか嫌な予感がする」


 顔は笑っているのだが、妙に硬いのはリリにも察知されてしまう。


「お兄ちゃんが心配?」


 笑顔でリリに心配をかけまいとしているはずが、やはり硬いらしい。


「お兄ちゃんって、困ってる人を見るとほっとけないからなぁ」


 確かに、レイモンドの性格ならそうだろうと納得してしまう。


「だからね。すごくカッコいいの」


 妹からも好かれている。そして、レイモンドも妹を大切にしている。


 それでかと、シュリアは納得した。


 ちゃかすように「お兄ちゃん」と呼ぶと、寂しそうにやめてと言っていた。


 もう会えないと覚悟を決めていたのなら、あの言葉は相当に刺さったはずだ。


 二度と会えない最愛の妹を思い出させて、いじっていた自分。


 妙な自己嫌悪に陥る。


「あれ? え? お姉ちゃんどうしたの?」


 なんでもないなんでもないと答えるが、自己嫌悪は消えない。


 リリはもう随分前から、シュリアの呼び方をお姉ちゃんにしている。


 シュリアには、その呼ばれ方は新鮮だった。


 小さい子にそう呼ばれることはよくあることだ。しかし、家族として親愛の情を込めて呼ばれるなど、今までに無かった事だ。


 呼ばれる度に、妙にこそばゆい。


 もし、リリと離れることになって、誰かにお姉ちゃんと呼ばれたらと思うと、レイモンドがやめてと言っていた理由がわかる。だからこそ、更に自己嫌悪になる。


 ラースニアの食堂の美人姉妹。


 1番人気は不動の人がいるが、しっかりとその人を立てて、波風立てないようにしてるのは相変わらず。だが、姉妹となると、話題性があがる。


 シュリアとリリを見にラースニアに寄るだけの客まで出る始末だ。


 しかし、シュリアが人妻と知ると、さっさと帰る客も居て、女主人からは内緒にと言われてしまっている。だが、リリに興味を持つような相手がいると、問答無用で殺気をぶつけている。


 もちろん、あの行商にぶつけたような本気の殺気ではない。


 あんなのをぶつけまくっていたら、食堂に客が来なくなってしまう。


 妹を大事にする姉が睨んでいる。しかし、それにしては怖いな。程度の殺気だ。


 そんな感じで平和なラースニアなのだが、最近見知った顔が出入りしている。


 シュリアにとって見知った顔だが、村人から見たら初見だろう。


 グレッグの村の行商だ。


 比較的海岸線に近いラースニアの村に、異界の武器や道具を売りに来ている。


 第三勢力では神剣としてもてはやされてる異界の武器だが、使い勝手が悪いものは売られてしまう。


 切れ味もそれほどではなく、また、質も良くない武器が流出している理由でも有る。


 だが、それでも異形のモノを斬ることは出来る。


 レイモンドの様な力があれば、シュリアの様な技があれば、使い手次第な武器となる。


 実は第三勢力に渡っている神剣も、二級品だ。


 触るだけで斬れる様な武器は、村からは出ない。


 レイモンドやシュリアが、そしてレイモンドの父親が持ってる様な武器が、特殊すぎるのだ。


 そして、シュリアの様子を見るためか、はたまた、通りがかりなのか出入りするようになっていた。


 シュリアは特に表情にも出していないが、シュリアを見たグレッグの村の者達の方が驚く。


 感情がなく人を殺すことに全く躊躇しないシュリアが、楽しそうに接客をしているのだ。


 そして、そっくりな妹と談笑している。


 別人なのではと思うも、僅かな攻撃の気配も見逃さず、試そう等とすると強烈な殺気をぶつけられる。


 昏倒まではいかずとも、本物と解る。


 シュリアが接客担当になっても、全く昔の話は出ない。いや、シュリアが出させない。


 その笑顔は本物だが、僅かな、ほんの僅かな殺気が、相手を縛り付けている。


 少しでも、この生活を壊すような真似をすれば、その場で解体される。そう思ってしまう。


 そして、必要以上にお金を使って去っていく。


 良い客なのか、悪い客なのか、とにかく、売上には貢献してくれている。


 そして、その行商が残していく道具には、防具もある。


 シュリアはそれを、こっそりと買っていた。


 レイモンドはいつも服をボロボロにして帰ってくる。


 帰ってくると、いつも傷だらけだ。


 笑顔で人を守れたと嬉しそうに話すが、その傷が、誰かを守るために受けたものだと解る。


 戦い慣れているはずのレイモンドが傷を負う。つまりは、人を庇う。


 すべての攻撃を避けて、そしてすべての敵を倒すことも不可能ではないだろう。


 しかし、帰ってくる度に服はボロボロで、体は傷だらけ。


 自らの体を顧みず、自分の体を犠牲にしてまで戦う。そして、誰かを守る。


 シュリアがレイモンドの服を縫うときは、人間の急所に当たる部分に防具を縫いこむ。


 そこだけ二重にして、防具の硬い部分を仕込んでおく。


 少しは、気休めになるはずと思って。少しは、傷が減るようにと。


 小柄で、誰かを守るよりも守られるイメージなレイモンド。しかし、常に誰かを背に、守るために戦っている。


 例え、自分を狙う、自分を殺そうとする相手でも、異形のモノを相手にした時には守って戦う。


 シュリアが村で出来ること。


 それは、村を守ること。村のみんなを守ること。レイモンドの家族を守ること。


 そして、帰りを待つこと。


 女の勘が妙な苛立ちを与えてくるが、シュリアはレイモンドが帰ってくるのが待ち遠しかった。



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