役割と道程
レイモンドたちが辿り着いた村。
異形のモノの気配の無い村は、久しぶりだった。
シュリアによれは、もっと遠くに居る気がするらしい。
いい加減、どうやって感知してるのか教えて欲しいと頼んだが、あっけなく断られる。
理由も「あたしがいる役割、なくなっちゃうじゃないですかぁ」だそうだ。
自分でも異形のモノを倒せるのに、役割もなにもと思う。
確かに自分が役割を持ちたいと思う気持ちは解る。
子供の頃でも、何かを任されると大人になった気分だった。
自分に出来ることあって、それが自分の役目。そういう自負が自分の心を支える。
自分の役目を全うすることで、自分自身を高める。
シュリアが村で一人だったと話したことがある。それならば、レイモンドと共に居る時に自分が何かの役に立ち、そしてレイモンドの為になってると感じるならば,それも良いと思った。
それにしても、この賑わい。
異形のモノが察知しないわけはないだろうと思うが、しかし、平和だ。
「なあ……なんでここ、大丈夫なの?」
レイモンドが周りを見て不思議そうに言う。
「さあ? なんででしょうねぇ……」
シュリアもそんなふうに言うだけ。
村の建物の外には店が並び、まるで市場だ。
新鮮そうな果実や肉、他にもいろいろな物が売られている。
異形のモノが襲ってくる前には、レイモンドの町でも、こういう催しは行われていた。
懐かしい感じ。しかし、違和感。
何故コレほどの賑わいを、異形のモノが見逃しているのか。
異形のモノと戦えるのが自分だけじゃないと、シュリアと、シュリアの村の人を見て知った。
自分は化け物だ。しかし、シュリアやシュリアの村の人達は、そうは見えなかった。
人間の身で、異形のモノと戦える者たち。
この村にも、そういう人たちがいるのだろうか。
そういう人たちが村を守っているならば、この村の平和にも納得がいく。
気が少し楽になる。
自分が間に合わなくても、助かる人がいる。
自分が手を差し伸べても間に合わない人たちを何人も見た。しかし、ここなら平和だ。
そういう場所があるなら、誰か迷ってる人を見つけたら教えてあげられる。
安全な場所があると。
そうすることで、誰かを救える。
そうすることで、また他の誰かを救いに行ける。
良い場所だ。
レイモンドの心に、久しぶりの安らぎが訪れていた。
気が抜けたら、足からも力が抜けてしまったらしい。
広場らしき場所のベンチに腰をかけて、空を仰ぎ見る。
久しぶりに、のんびりと空を見る。
ふと気づくとシュリアの顔が間近に迫っていた。
「なな、な、なにかな?」
戦いに関して以外は普通の少年。
女の子が顔を近づけてくれば、どぎまぎしてしまう。
「ねね、レイモンドさん、レイって呼んでいい?」
懐かしさを感じながら、「ああ、いいよ」と答える。
家族にはレイと呼ばれていた。
戦って守った人たちにも、ほとんど名乗ってなど居ない。
この近くで自分の名前を知っているのは、シュリアくらいのものだ。
「けど、いきなりなんで?」と聞くと「お嫁さんだから」と答えてきた。
「……まだ、そのネタ…ひっぱってるんですか……」
シュリアはふくれっ面になりながら「本気ですよぉ」。
苦笑するしか無い。
多分、旅が終われば自分は何処かへ消えなくては行けない。
こんな化け物が居れば、誰からも怖がられる。
怪我をすれば甲殻が出来、騎士や兵士でも刃の立たない異形のモノを殺す化け物。
そんな化け物と、一緒に居てくれるはずがない。
そして、レイモンドは少し感づいていた。
僅かな違和感でさえも、今のレイモンドは感じとれる。
だから勘づける。
知りたくもない事を、知ってしまう。
だがそれも、知らないふりをすれば済むこと。
「まあ、お嫁さんは無いかな。シュリアは妹に似すぎてて、そんな風に見れないよ」
レイモンドがシュリアに笑いかけて言う。
優しく、そして、寂しそうに。
更にふくれっ面になるシュリアの横で、レイモンドは目を閉じた。
少しは休める。
騒がしい雑踏の中で、人が行き交う中で、自分がまだ居ても良いと言われてる気がして。
少しだけ、少しだけ、ほんの少しだけ、自分が人間で有りたいと思う。
だが、それ以上に、守りたい。
この平和を。
この人達を。
自分が出来るなら。
「そろそろ、行こうか」
「レイは休まなくて平気?」
荷物を背負い「うん、平気」と言うとレイモンドは歩き出していた。
「あ、そうだ。じゃあ、お兄ちゃんって呼ぼう」
「……お願いだから、それはやめて」
村を一通り見て回り、そして、焦燥。
こんな事をしていていいのか。
こんなところで立ち止まっていいのか。
化け物が、人の暮らしに混じっていていいのか。
「どうかしました?」
シュリアの言葉に瞬間的に愛想笑いをし、自分の立場を考える。
「行こうか」
たびに必要なものはシュリアが買い揃えていたらしい。
「はい。えっと、やっぱり狩りに?」
レイモンドにとっては戦いだが、シュリアから見ると狩りらしい。
「助けないとね」
そう言いつつ、自分は何者かを、人の味方なのかを自問自答する。
そして、人の心を持っているうちは、と自分の心を縛る。
穏やかな村を出発し、街道を行く。
シュリアの感知ではまだ、敵の様子はない。
聞き耳をたててるようにも、どこかを見てるようでもないが、感知はしてるらしい。
そして、平和な街道ならではの、チンピラの出没。
5人組の男たちが急に現れ、金品を要求する。
こんな情勢なのに、こんな連中がまだいるのかと呆れる。
「構ってる暇は無いんだがなぁ……」
「ですよねぇ……」
意見は合ったので、お互いに顔を見合わせて頷く。
「ふざけんな、このガキどもが」
チンピラが小刀を振り上げるより先に、レイモンドは間近まで接近していた。そして、軽く振ったこぶしが軽く顎を弾く。
チンピラが脳震盪をおこして倒れるよりも先に、他の2人のチンピラがシュリアに蹴倒される。
「足癖悪いんだな……」
小声で言ったつもりが、シュリアに睨まれた。
レイモンドは耳もいいんだなと苦笑した。
「……な、なんだこいつら」
怖気づくチンピラ。
「化け物がそこら中にいるんですよ。その中を2人旅してる様なのに突っかかるほうが悪いんです」
シュリアが笑顔で言う。
化け物という言葉が、少しレイモンドの心に刺さる。
自分もそうだしな、と。
シュリアに蹴倒され、頭を打ったのか気絶してる2人。
「さっさと連れて帰ってくださいね。襲われないうちに」
チンピラはどこの世界でも一緒な捨て台詞。完全に定番化してる「覚えてろ」と言って逃げていった。森の中に。危険なはずの森の中へ。
「あっちに異形のモノは?」
「いませんよ。心配ですか?」
「まあね」
そしてレイモンドは深くため息をつき「人間ともやりあうのかぁ……」と。
「まあ、人間相手なら楽勝でしょう」
シュリアもまるで人外で有るようなセリフ。
ははは、と力なく笑った。
「ところで、今の連中は感知出来なかったのかい?」
「居るのは知ってましたけど、まさか襲ってくるとは思いませんでしたねぇ」
「まあ、こんな状況だしね。全財産抱えて、安全なところに逃げようって人を狙うのもいるか」
「ああいう人も、守るんですか?」
シュリアの質問に躊躇なく「うん」と答えるレイモンド。
「異形のモノの場所まで、後どのくらい?」とレイモンドが聞き、シュリアが答える。
二人はまた進み始めた。
王と側近は籠城していた。
王都へと戻ろうとしていた時、王都陥落の報を受けたのだ。
そして、反乱軍は王の首を狙っている。
北の城には幾つもの隠し部屋があり、また、強固な監獄棟もある。
王都の城が絢爛豪華を現したものならば、こちらは鉄壁を表している。
だからこそ、異形のモノの襲来で王はここに居を構えた。
異形のモノの襲来の際には、報告は雑であった。
雑でも仕方がない。敗走者の伝聞でしかない報告だったのだ。
あまりにも小さい人間の世界。そして、その中で争われる権力闘争。
野心あるものには権力と領地を与え、力あるものには騎士としての地位を与えた。
王は狭いといえど人間世界の王。
それぞれの民に、適切な役割を与えたつもりだった。
だが、王が他者に与えられない地位があった。
それは、王自身の地位。
反乱の首謀者は、国自体を欲し、そして、王の地位を欲したのだろう。
既に王は王としての役割を果たせない。
北の城に籠城し、反乱軍に囲まれている。
すでに王たる地位は、反乱軍のリーダーに渡ったと言っても良い。
だが、反乱軍のリーダーは、あくまでも反乱軍のリーダーだ。
王の首を取り、国を取ったと宣言し、そして、王として叙任されなければならない。
そのためには、今の王が邪魔なのだ。
「報告いたします。反乱軍の一部が撤退。しかし、反乱軍の数自体は、未だこの城の総員よりも多い模様」
王は「そうか…」とだけ言うと、椅子に座ったままため息を付いた。
暫く考えた後「地下を崩落させよ。全て壊せ」と命令を出した。
聖鎧が封じられていた場所。
それ以外にも、様々な物がある。
聖鎧は研究の対象とされていた。目覚めさせてはいけない。しかし、解析は必要。
一度は目覚め、破壊神ならぬ力を見せつけた聖鎧。
その力を目覚めさせぬまま使うことが出来れば、それは安全な戦力。
力を求めない者はいないだろう。
力を得るために知恵を使う。
王が管轄し、領主を定め、しかし、ほとんど領民は居らずに死の場所とされていた場所。
そして、人の往来が無い、北の城という立地。
秘密裏に事を進めるのに、これ以上の場所はない。
聖鎧だけではない。
漂流物として異界より来たものの、あの村のように秘匿されなかった異物は北の城に収められている。
異界など無い。
そういう事にしなければならないという決まりでも有るように、漂流物は無かったことにされる。
シュリアの居た村のように、漂流物を使ったり売ったり等は、いわゆる世界の裏側なのだ。
その集積された場所を、王は崩落させよと命じた。
「反乱軍といえど、それほどの技術者が居るとは思えませんが…」
「あれらは、危険だ。反乱軍と言えど我が国の民。誤って触れれば事故になりかねん」
そう言うと、再度崩落の指示を出す。
「事が終われば、王として王都に向かう。それが努めだからの」
側近達は苦渋を噛みしめる様な顔。
「王はな、王として終わらねばならぬ。それが王なのだ」
王はそう言うと、再び腰を下ろした。
「僭越ながら、我らも王の側近として、最後まで勤めを果たしたいと思います」
王は「すまんな」とだけ。ただ、申し訳無さそうな顔をしていた。
そして王は北の城から出た。
地下は既に崩落させ、誰も立ち入る事はできないだろう。
北の城自体が崩壊したのだ。
囚われていた人々も開放され、そこに残っていた民衆も北の城を出ていた。
北の城は、瓦礫の山の様になっている。
「反乱軍の長にお会いしたい。叶うかな?」
王の言葉は、反乱軍の王の首を取ると息巻いていた者を圧倒した。
王としての威厳が、まだそこにある。そして跪かせた。
「反乱軍の一員として、王の出頭に感謝致します。」
息巻いていた者が跪き、そして、敵としての王に敬意を払う。
与したとは思わず、他の者も納得した。
「いままでこの国を統治した王として、反乱軍のリーダー…いや、新たなる王に、王位を渡したい。すまないが、案内を頼む」
王はそういうと、自ら手枷をはめる様に頼んだ。「捕まえねばならぬのだろう?」と。
反乱軍の一人が「失礼します」と言いつつ、手枷をはめる。
会ったことも無かった自国の王。
自らの終わりを、しっかりと終わらせようとしている姿。
「民衆は、異形のモノから逃げ延びて北の城に来ただけだ。私に与しているわけではない。理解してほしい」
反乱軍もその言葉には「理解しております」と答える。
どちらも、お互いに敬意を払っている。
足にも足かせがはめられ、そして、馬に乗せられる。
王は、捕虜となり王都へと向かう。
王都への帰還は、王にとって、死の旅であった。
死する前に、今まで継いで来た異物達は埋めた。
残っているのは、これから流れ着く異物と、聖鎧。
聖鎧の危険性は、生き残った騎士が伝えるだろう。
触れてはならない、人を喰らう、そして適合すれば心無くば人を殺す悪鬼となり、心があれども僅かな間しか正義を行えない異物。だが、その力は強大で破格。権力者であれば、その力を振りかざしたいと思うだろう聖鎧。
夢見がちな者であれば、永遠に纏える者を探して、あまたの人を贄にするかもしれない。この国を救おうと、今回、王がしたかのように。
もう無ければ、聖鎧が失われていれば良いのだがと思う。
開いてはならない、パンドラの箱。
あまたの命を食らうという悪夢。そして、適合者という希望。だが、僅かな間の希望。
王は自ら開けたパンドラの箱を後悔していた。しかし、開けなければ、反乱軍さえも異形のモノの手にかかっていただろう。国盗りなぞどうでもいい。この世界の人間を少しでも助けられたのならば、と。
王は、自らの過ちを悔やむと共に、満足もしていた。その2つの心が、王の威厳を保っている。
馬に乗せられ連行される中でも、その威厳は消えることはない。
そして、その連行される姿を、影に隠れ見ていたのはレヴィアスから報告を指示された兵。
王を助けるには自分だけでは無理と解る。
急いで南に戻り、王都を避け、そしてレヴィアスへの報告を行う事が最優先と判断した。
判断と行動は同時。
反乱軍の誰もが気づく前に、兵は南へと戻るために走りだしていた。
目の前に3匹の異形のモノ。
レイモンドとシュリアにとっては、既にお手軽な敵に見えている。
新しい能力でも持っていない限りは、瞬殺出来る様な数と相手。
しかし、問題はレイモンド達と異形のモノの間にいる人達。
倒れた馬車を壁にし、槍で突くことでなんとか異形のモノを押さえ込んでいる。
異形のモノは人間を舐めきっているのか、それとも、何かを感じているのか。その人達を一気に襲おうとはしていない。
レイモンド達は普通に立って見ている。
異形のモノからもレイモンド達が見えるはずだ。
恐らくは、目の前で応戦する人々も、レイモンド達も、餌として見えているのだろう。
この場で一気に異形のモノを片付ける事は簡単だ。しかし、そうするとレイモンド達の力を人々に見せる事になる。
人々は見たこと聞いたことを噂にする。
勇者の伝説でも、化け物が化け物を倒したでも、話は広がるだろう。
勇者の伝説ならば、死にゆく人にとっては、なぜ自分に救いが無いのかを呪う。
化け物の話ならば、隣に居る人間でさえ、信用できなくなるだろう。
ある意味、人に自分達の戦う様を見せることは、あまり好ましくない。
倒せる人がいる。
ソレは良い。しかし、騎士でさえ倒せない異形のモノを倒せるのは何者か。
人の疑念は、恐怖と相まって、懐疑心をふくらませるものだ。
「どうすれば、あの人達が倒せた様にみせられるかな」
小声で問うレイモンドに「やってみるね、お兄ちゃん」と答えるシュリア。
「お兄ちゃんはやめてって」
レイモンドの言葉が終わる前に、シュリアは移動を始めた。
レイモンドでさえ目で追うのが大変な速度。それで馬車の人たちと異形のモノに感づかれずに走り抜け、異形のモノの2匹の間でコマのように回る。回りながら通り過ぎ、そして、異形のモノの遥か背後に着地する。
異形のモノ。
蟻型の2匹は、それで意識を飛ばされたのかのように前のめりに倒れる。
どうやったのか、レイモンドにも見えなかった。
倒れかかる、だが、襲い掛かってくる様に見えた異形のモノに、槍が突き立てられる。
槍は弾かれる事はなかった。
シュリアの功績。コマのように回転した時に斬ったであろう場所が幾つもあり、そこに槍が刺さった。
2匹が槍で貫かれ、しかし、貫通には至らない。
内蔵には達した槍は、背中の甲殻で止まったのだろう。
異形のモノは倒れきることはなく、槍で支えられるように力尽きる。
既にシュリアが致命傷を与えていたのかもしれない。
槍の一刺しだけで死ぬような異形のモノではないからだ。
驚く人たちを尻目に、レイモンドが突進していた。
最後の一匹を、思いっきり殴る。
馬車の人たちは倒れてきた2匹に意識をもっていかれている。その隙を突いた。
殴り飛ばされた蟻型は、しかし、地面に落ちる前に既にそこにいたシュリアに蹴り上げられる。
殴ってたレイモンド本人が追いつき、そして、斬る。
斬られた蟻型は道の端で痙攣し、死を迎えた。
馬車の人たちは、いきなり倒れてきた蟻型が自ら槍に刺さり、そして、残りの1匹が何故か死んでいるという状況しかわからなかった。
「すごい技だね。よくあんな風に動けるな」
すでに馬車の場所から遠くまで来て誰も見ていないことを確認し、レイモンドが口にした。
「お兄ちゃんも、慣れれば出来ますよぉ」
「だから、お兄ちゃんはやめてください……」
シュリアは笑いながらじゃれついてくる。
ほんとにリリを思い出してしまい、妹が側に居るような感覚におちいる。
心が楽になる。
同時に、心が軋む。
だが、他の女性を妹扱いするのも失礼だよな、と自制する。
それに……とレイモンドには思うところもある。
「レイで良いですから。その、お兄ちゃんは妹を思い出しちゃうんで……ごめん」
寂しそうな笑顔のレイモンド。流石に申し訳なくなったのか「ごめんなさい」とシュリア。
「ほんとにそっくりだからね。懐かしいくて嬉しいんだけど、もう会えないから……」
シュリアが「そうなんだ……」というと「死んではいないよ。けど、俺はもう帰れないから」と。
「絶対、帰れますよ。絶対。だってレイは強いんですからぁ」
ははは、と苦笑する。
強くても、生きていても、あの姿を見せて、怖がられて、帰れるわけがない。
帰れば恐らくは歓迎されるだろう。けど、化け物の妹としてリリを苦しめるかもしれない。父と母を苦しめるかもしれない。守るためならば帰る。けど、居続ける事は無いだろう。それは、レイモンドの決意。
居場所を失ってでも、忌み嫌われても、自分が守れる人たちは、この手で守る。
「強さ……か……」
ポツリとつぶやき「え?」と聞くシュリアにごまかすように「次は近い?」と聞く。
人としての強さは望んだ。しかし、人で無くなることは望んではいない。
「まだ暫く先ですね。けど、数がいます。あと……なんとなく違う異形のモノの感じがします」
あの蜘蛛か。
またあれと戦う。次は意識を奪われずに勝てるのか。
生きて勝てるのか。
「違う異形のモノが、群れてるの?」
レイモンドの問に「ううん」と答える。
「違うのは点在してる感じで、その向こうに群れてるのがいますね。群れてるのは今までのやつらですねぇ」
やるしか無い。
倒すしか無い。
殺すしか無い。
自分にできる限りの殺戮を。
化け物である自分が出来る、化け物である異形のモノに対する攻撃を。
「点在してるやつは、シュリアは様子見で手を出さないで。危ないかもしれない」
きょとんとするシュリア。
死にかけたのを見た。それを見捨てた。けど、レイモンドはまた一人で戦おうとしている。
「私だって、なんか出来ますよぉ?」
レイモンドは微笑んでいた。
「女の子を危ない目に合わせたら、父さんや母さんに叱られちゃうしね。妹にも嫌われちゃうよ」と言った。
危ない敵は自分だけで何とかする。
協力して倒せるなら、それもいいだろう。しかし、まだ敵の全てがわかってるわけじゃない。
シュリアに協力を頼むなら、弱点や攻略方法が解ってからだ。
「行こうか」
笑顔の中に決意があった。シュリアは「はーい」と付いて行く。
レイモンドと並んで歩くシュリアは、まるで在りし日の兄妹であった。




