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継ぐ者  作者: 犬神弥太郎
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異なる脅威と表と裏


 荒れ狂う海岸線。吹きすさぶ風。その中を物ともせずに、レイモンドが駆け抜けていく。


 シュリアの指差した方向には、まだ足を踏み入れたことがない。


 敵が居るだけなのか、それとも、助けを求める人がいるのか。


 腰に備えた武器をいつでも取れるようにしつつ、海岸線を進む。


 昔なら考えられない。海岸線に出た時点で風や波に圧倒され、すぐさま引き返していた。


 海岸近くの村に遊びに行き、そこで海岸で何か拾おうとした覚えがある。しかし、その時は危ないと怒られた。


 今は怒ってくれる人が居たことが懐かしい。そして、その人達を守りたい。


 そんなことを思い出すほど、長い距離を走った気がする。


 シュリアが間違える事もあるかなと思いつつ、警戒は怠らずに走り続ける。


 海岸線は岩場と砂浜が連なり出来ている。そして、村は大体が岩場にある。岩場の奥には海風が吹き込まない様な場所があり、海岸線で暮らす人々は、そういう場所に集落を作る。結果として、周りからわかりづらい場所になり、異形のモノも見つけられなければ通り過ぎるかもしれない。


 村自体は大体が大きくなく、そして、ある程度の距離がある。近すぎれば漂流物の取り合いになり、また、遠すぎれば交流ができなくなる。交流で物々交換をし、食料などを確保するのだ。


 前の村から結構な距離を走り、そろそろ村が合っても良いはずと思いつつも、妙に嫌な感じがする。


 海岸線から内陸向きに走る方向を変え、草木で身を隠せる場所を探す。


 妙な悪寒が背筋を走る。


 身を隠しながら、速度は落ちるものの村を探して走る。


 普通の人間であれば、今のレイモンドを視認することはおろか、気づくことも出来ないだろう。


 自分の人間離れしていく身体能力に、嫌気が差しながらも有り難みも感じる。


 助けられる力。


 その力を感じながらも、それを脅かす悪寒。


 海岸線からいくつかの岩場を超えると、そこに隠れるように村。


 岩場と山林に囲まれ、人は山林側からしか出入りできないような天然の要塞のよう。


 しかし、その村にある気配は人外。


 人が到底登れないような岩場を走り抜け、レイモンドは村を見下ろしつつ様子を探る。


 流石にレイモンドと言えど、一斉に襲いかかられてはたまらない。しかも、この悪寒。


 いつもなら「誰かいますか」と叫びながら安否を確認する。そして、わずかにいるだろう異形のモノをおびき寄せ、単騎撃破しつつ殲滅する。しかし、なにか違う。


 悪寒で体中から噴き出る冷や汗が、体を冷やしていく。


 村に近づくほどに、それを感じる。


 そして、村の入口。


 思わずまだ敵を感じて居ないのに構える剣。


 何が違う? どう違う?


 村に入ってはならない。入ったらやばい。そう感じる。


 一瞬、何かが視界の隅をかすめる。


 レイモンドの今の視認速度でさえ捉えきれない速度。


 思わず後ろに飛び退く。


 とっさにとった動きだったが、それが幸いした。


 地面が、溶けている。


 何かが飛んできた。液体だ。そして、それが地面に落ち、地面が溶けた。


 飛ばした相手はまだ視認出来ず、そして、相手はレイモンドを見つけている。


 岩場から上を見るに、家屋の上には異形のモノの姿は無かった。そして、今も目の前には居ない。それにしても、今まではこんな溶解液を吐いてくる異形のモノなんて居なかった。


 勝手が違う。


 この敵を相手に、武器を使って溶かされるか?この武器は、この液体にも耐えられるのか?


 考えろ。考えろ。考えろ。


 感じろ。感じろ。感じろ。


 神経を研ぎ澄ませ、敵の動きを、攻撃を察知しろ。


 後ろで木の葉が一枚落ちる事を感じるくらいまで高めた緊張。


 僅かな気配の動きを感じた瞬間、レイモンドは駆け出していた。


 目の前には横に移動する毛むくじゃらな異形のモノ。その口らしき部分が開き、溶解液を吐き出し、レイモンドに向かって飛ばしてくる。しかし、レイモンドの動きは異形のモノの移動するさきに向かっていた。


 僅かにかすめただけで、服が解ける。肌についた部分が焼けるように熱い。しかし、今まで伊達に生き残ったわけじゃない。痛みを心の強さで押し付け、異形のモノの着地点であろう場所を切り裂く。


 異形のモノは、今までにない形。姿をしていた。


 八本の足に頭と体。その姿はまるで蜘蛛。


 体中にびっしりと毛が生え、それが他の異形のモノの様に体を守っているのだろう。


 そして、レイモンドの攻撃を致命傷にしなかった。


 自ら剣で自分の腕を傷つけ、その血で剣を覆ったレイモンドの攻撃。予想通りレイモンドの血で出来た部分は溶け崩れ、剣

自体があらわになっている。


 何度も出来そうにない荒業だ。


 新しい種類の異形のモノに傷を追わせたが、まだこちらを向いている。動いている。


 そして悪寒は続いている。


 他にもいるのか?


 今まで僅かな時間で異形のモノを葬ってきた。だからこそ、数が多くても多少の対処は出来ていた。だが、この種類にはそうもいかない。


 周りを気にしながら、再び自分の腕を斬りつける。


 流れ出る血が剣を伝い、新たな刃を生み出す。


 レイモンドはゆっくりと動き、時間を稼ぐ。ゆっくり、ゆっくりと。


 流れ出る血が止まる度に傷を増やす。


 いつの間にか剣は長刀よりも長く、そして、鋭くなっていた。


 まずは目の前のこいつを倒す。そして、他の敵も探す。


 異形の蜘蛛は、隠れるのをやめていた。レイモンドの目の前で口を動かし続ける。


 またあの溶解液か、それとも別の何かか。


 先に動いても追われて撃たれれば、動いた先で当てられるだろう。後手に回り、相手の動きを見てから動けば、避けられるかどうかわからない。最初の溶解液も、勘でなんとか避けられたのだ。


 異形の蜘蛛が動きで攻撃してくればまだ避けられる。だが、溶解液の速度はレイモンドの動きの速度さえ超えている。

反応出来るか否か。


 僅かなレイモンドの動きでさえ、異形の蜘蛛もピクリと反応する。僅かな隙が出来ればと思うが、普通の異形のモノのと違って、動きが機敏過ぎる。


 ジリジリと時間が過ぎていく。


 焦りはレイモンドだけだろうか。異形の蜘蛛は、レイモンドから意識をはずそうとしない。視線をではなく、意識をだ。


 目は複眼の様に見える。本当に蜘蛛の様。その先にレイモンドが居る。


 何処を見てるかわからないが、レイモンドの動きは全て追われていた。


 滴り落ちる冷や汗。それが体中を冷やしていく。


 こんなのが何匹もいたら、流石にやばい。


 僅かに足がさがる。そして、何かにあたった。


 蜘蛛の糸。まさにそれ。それが、レイモンドの足にあたった。


 粘性の糸が足に絡まりまとわりつく。


 レイモンドの視線が足元に奪われる。一瞬だ。その隙を突いてか、異形の蜘蛛はすぐ間近まで迫っていた。


 蜘蛛が捕食する際には糸を巻きつけ、獲物を絡めとる。そして相手の体の自由を奪い、毒蜘蛛ならば毒を注入して殺す。毒を持たぬ蜘蛛ならば、そのまま獲物の体力を奪い、自由を奪い、捕食する。そして、レイモンドが相対した蜘蛛は、毒を持っていた。


 糸を巻きつけられる前に頭をかばった手は、そのまま糸で頭に押し付けられていた。そして、そこに蜘蛛の牙。二の腕に牙を突き立てられ、そして毒が注入される。蜘蛛の毒は神経毒が多いが、この毒もまた然り。しかし、蜘蛛の大きさも相まって、その毒の毒性と回り方は早い。


 体中を痺れが襲い、肺が呼吸を止め、心臓が鼓動を止める。そして、脳さえも動きを止める。


 最後に視界に有ったもの。それは、蜘蛛のあぎと。


 このまま死ぬのか。この程度だったのか。


 レイモンドの意識は薄れながらも、悔しさで溢れていく。


「……期待はずれですかねぇ」


 遠くで、レイモンドが喰われるのを、ただ見ているだけのシュリア。


 助けに行くでもなく、様子を見ている。


 恐らくは異形の蜘蛛が気配を手繰れないほどの距離。しかし、シュリアは異形の蜘蛛の存在を知っていたのだろうか、まるで慌てる素振りが無い。


「まあ、ちょっとはと思ったんですけど」


 シュリアが踵を返し、去っていく。


 レイモンドの体に蜘蛛の牙が刺さり、何度も刺さり、そして、飲み込まれていく。


 食いちぎられなかったのは、牙が刺さったところがすぐに硬質化しためだろうか。だが、飲み込まれてしまった。喰われてしまった。


 異形の蜘蛛は糸を伝い、村の何処かへと姿を消していった。



 異形の蜘蛛は、入念に糸を張り巡らしていた。


 糸の一本一本が、人の視認できる細さを超えている。


 超えているのは、太いということではなく、細いということ。


 異常なまでに細く、しかし、強い。そして、鋭い。


 それらが蜘蛛が最初に村を襲った時、人々を捕らえた。


 糸のどこにそれがあるのか、強力な粘性が人々に付着し、そして、捕らえた。


 僅かな時間に、異常な速度で動く異形の蜘蛛が走り抜けた場所には糸が張られ、それらに触れた人たちが次々に捕獲され、捕食される。隠れた者たちはわけもわからず、どこかに避難したかもしれない。もしかすると、人知れず周りから人が減っていき、異変に気づいた時には終わりの時だったのかもしれない。


 蟻の様な異形のモノと違い、見えない恐怖。


 異形の蜘蛛は巨大だった。しかし、その姿は速度故に視認されない。


 群れをなして人を襲う蟻型の異形のモノと違い、単体で縄張りを確保するタイプなのか、巣の糸は村の隅々まで届いている。


 巣の中心では、糸の振動を待つ異形の蜘蛛。


 僅かな振動でも、ソレが何か解る程の知覚。


 動かない。


 村の住人は何処へ行ったのかと、誰もが危険を知らずに足を踏み入れるだろう。


 知らずに足を踏み入れ、そして、糸に触れて異形の蜘蛛に音もなく襲われる。


 他の異形のモノが居ないのも、これが居るせいかもしれない。


 そして、今まで異形のモノを倒してきたレイモンドでさえも噛まれ、喰われた。


 飲み込まれれば、消化されて異形の蜘蛛の栄養にされてしまう。


 静けさに襲われている村。


 静寂に抑圧されている村。


 村そのものが、巨大な罠と化している。


 シュリアは遠くから眺め、そして、去った。


 助けた三人は閉ざされた町の前まで案内しただけで別れた。


 レイモンドに見せたのとは全く違う、冷淡な対応だ。


 助かった理由、襲われずに生き残った理由さえも聞いてもいない。


 いちおう町まで案内はしたが、それだけだった。


 その後、レイモンドの後を追うも、急ぎもしなかった。


 信用していたというよりも、結果を見に行っただけ。そんな風だった。


「あの武器、回収出来るかなぁ」


 のんびりとした言い回しだが、レイモンドを心配する言葉はない。


 村に近づこうにも、身を隠して入れそうな場所は山林側のみ。そして、岩場側からは丸見えだ。だからレイモンドは山林側か

ら入った。


 シュリアは岩場の上から、様子を伺う。


 目も良いのか、糸が見えるのか、蜘蛛の糸に触れること無く動きまわり、様子を探る。


「難しそうですねぇ」


 僅かな言葉が作る空気の振動にも糸が揺れる。しかし、異形の蜘蛛はまだ餌とは思わないらしく動きはない。それを知ってか知らずか、村の様子を外周から見て回る。


 異形の蜘蛛がどこにいるのかも、シュリアにはわかるのだろうか。


 淡白な表情で村を見下ろすシュリアの視線は何処か定まらず、何かを探しているかのようにも見える。


 武器の回収。シュリアはそう言った。溶けずに排出されるのであれば、待っているのはそれであろうか。だが、村のどこかに武器が落ちていたとしても、どうやって回収するのか。


 少なくとも、レイモンドを探しているようではない。


 のんびりと構えてる風に見えるが、周りの気配の動きには鋭い。


 異形のモノや異形の蜘蛛が居る場所ではあるが、少しは野生動物もいる。それらが動く気配も全て把握しているようだ。そして、その手はすぐに武器に届く位置にある。


 レイモンドと居た時の穏やかな印象はどこかへ。


「暫く様子を見ましょうか……。さようなら、レイモンドさん」


 シュリアは淡々と言葉を吐くと山林の中に消えていった。


「死にましたか?」


 数時間してシュリアの元を訪れたのは、元いた村の者だった。


 表情を変えず「そうみたいですね」と答えるシュリア。


 まるで自分と関係の無いことのように、あっさりとしたものだ。


「見たことの無い大蜘蛛です。彼も勝てませんでした。あの村は要注意ですね」


 高台の丘から遠くに見える岩場と山林の隙間。


 山林の木々に阻まれ村があることは視認出来ない。


 村の者が「回収は?」と聞くと「無理」とだけ答える。


 視線は村のある方向。


「もったいない事をしたかも知れませんな」


 レイモンドの事か、それとも、武器の事か。


 シュリアは視線を外さずに「そうね」とだけ言い、そして、なにもないのに避けるしぐさ。


 村の者は不思議そうに見ている。


「糸、飛ばしてきたわよ。こっちに気づいてるみたい」


 視認できない風に乗せて飛ばされた糸。そして、それを余裕で避けるシュリア。


 その糸に触れればどうなっていたのだろうかと、村の者は血の気が引いた。


 慌てて伏せる。


 伏せることでしか、知覚できない糸など避ける方法は無い。


 その糸を避けられる認識と技量を持ったシュリア。そしておそらくは、シュリアは村の者でさえも助けない。


 見たことのない大蜘蛛。そう言った。しかしシュリアはレイモンドと異形の蜘蛛との戦いを見るだけで、蜘蛛の糸を避けた。


「そ、それでは、報告に戻ります」


 レイモンドとの会話の時は「はーい」だったのが「ええ、お願い」と対応まで違う。


 村の者はつないであった馬の所まで行くと、安心した顔で走り去った。シュリアもまた村の者が去った時には、その場にもう居なかった。






 人と人の争い。王軍と反乱軍の戦いには、結果が見え始めていた。


 参戦した者たちの大半が屍と化し、大地は血で覆われている。


 少数になればなるほど、残されていくのは戦上手。


 攻め際と退き際をわきまえた騎士ほど、戦場の中での立ち回りは上手い。そして、生き残る。


 そして同じ軍に所属する騎士達は、もちろん、連携を行う。


 騎士達が連携し、状況に応じた陣形になり、そして戦う。


 そういう戦いが続き、一旦は王軍が優勢になる。


 だが、反乱の火種は既に大火になりつつあったらしい。反乱の旗のもとに決起した者たちが、次々に集い、王軍を消耗させていく。


 退き際を解っていても、退けない場合もある。


 既に武器は血を浴び、肉を骨を斬りすぎで、切れ味を失っている。ただ振り回すだけの金属だ。


 兵士と言えど新しい武器を持ち、槍や剣は鎧の隙間を狙う。


 いくら戦火をくぐり抜けてきた王軍の騎士達と言えど、絶え間ない攻撃には抵抗しきれない。


 戦闘のさなか、意趣返しし反乱軍に付く者も多かった。


 それほど、王の政治は、領主たちの政治は、民衆から反感を得ていたのだろう。


 いつしか、反乱の軍は北へと王軍を追い始め、王軍は散り散りになっていく。


 散開しての攻撃等という戦略ではない。王軍の兵は武器を防具を捨てて身軽にして逃げ出し、騎士達で志無き者は、剣を捨てて馬を走らせる。


 南へ向かい、異形のモノの討伐の援軍だったはずの王軍は、いまや、異形のモノ以外に敗走させられていた。


「このまま、王都を制圧する!全軍進め!」


 リーダー格らしき男が声を上げると、みんなが呼応する。


 反乱軍は国の中央にある王都へと向かう。


 王は北の城に居る。そこに逃げていた。もちろん反乱軍は情報を掴んでいる。


 王都をを制圧し、そして、その後に側近程度しか居ない王を捕らえ、処刑する。


 普段の王都であれば、反乱軍等が攻め入る隙はない。しかし、今は状況が状況だ。


 残された民衆しか居ないならば、例え反乱軍に対抗しようともたかが知れている。


 異形のモノが作った状況を利用し、狡猾に物事を進めようとする反乱軍。


 異形のモノが後ろから来る事をどう思っているのか。考えているのか。


 だがしかし、王都へと向かう反乱軍は、王軍との戦いの疲れも見せずに意気揚々だった。


 新しい国のために、と。


 そして新たなる軍旗を翻し、反乱軍は王都を制圧していった。


 民衆ばかりしか居ない、無血開城だ。


 王さえも北の城へ逃げ、残された民衆は自分たちの行く末を考えて怯えていた。


 北から南へ向かう行軍は王都で物資を補給しただけで通過し、王都を守ろうともしない。


 どの行軍もそうだ。


 領主たちの行軍が近くを通った時も、王都の民衆は守りを期待した。しかし、まるで略奪のように食料や物資を奪い、そして、南へと消えていった。


 王都に駐留する戦える人たち。自分たちを守ってくれそうな人たち。


 それが王軍であろうと、反乱軍であろうと、民衆には関係がない。


 ただ、牙も爪もない民衆が望むのは、自らの命。


 それを守ってくれるのが誰であろうと、頼るしか無かった。


「王都は我らが手にあり!北の城で王を討ち名を上げろ!」


 王都を取り戻されては元も子もない。だから、ある程度の軍勢を残し、僅かな護衛に守られた王を追う者の志願を募る。


 王軍との戦闘で疲れきった者達も、王都での歓迎で安らぐ。


 戦える者たちが、戦えるようにもてなす。力なき民衆が出来ること。


 全てを剥ぎ取られ命を晒していた民衆たちは、今、反乱軍という剣と盾を得た。


 確かに反乱軍に対して好意を抱かない者もいる。しかし、それでも自分達を守ってくれるかもしれない存在は重要だった。


 対して王軍は敗走。


 しかし、その数は激減していた。


 負けたからではない。負けを認め後退や撤退をした者は僅かだ。ほとんどの敗残の兵が反乱軍に寝返ったのだ。


 お互いが戦っている中でも、立場が様々に変わる。


 命のやり取りをしている最中、味方から攻撃を受けることもあり、敵の脅威におののくこともあり、忠誠心の薄い者達にとっては「勝ち戦」で有りたいと思ったのだろう。だからこそ、勝てる側に付く。


 領土同士の戦い、また、自らが守る何かがある戦いならば揺るがない。しかし、今は国自体が揺るがされている。そんな中、その他扱いされる様な兵や、カネ目当ての傭兵がどちらに付くか等は考えるに容易い。


 王都に久しぶりの賑わい。


 人は今までも居た。しかし、騒ぐことはなかった。


 騒げば異形のモノに察知される。


 察知されれば、襲われ、殺される。


 そういう恐怖が人々に静寂を押し付けていた。


 だが今は、戦ってくれる兵が居る。


 異形のモノに勝てるかどうかではなく、戦う人達がいる。


 弱くても、武器があればわずかでも可能性を感じるのと同じ。


 だから今、王都は賑わい、沸き立っていた。


 僅かな希望を得た民衆と、王都を得た反乱軍によって。








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