07『ヴェルクリの家』
パーティーの方は、和やかに進行中です。
エルミナたち元王女さま組のところに各国のお偉いさんが群がり過ぎちゃってバルモルトさんを怒らせちゃったり、
モノカが子供たちに囲まれてノノカちゃんに変身させられそうになったり、
アランさんがメイドギルドのお姉さんたちに『モンスター』しちゃって奥さまたちに連行されちゃったり、
まあ、いつも通りですよね、それくらいなら。
この施設の正式名称は『ヴェルクリの家』だそうです。
みんなが自分の家みたいに大切にして欲しいから、ですって。
名付け親はニケルちゃん。
本当に優しい娘さんなんです。
今日が開院式典なのですが、孤児院自体はすでに運営開始しております。
院長のルハンナさんが、元々の成り立ちは孤児院なのだから他の施設の完成を待たずに少しでも早く始めましょうと号令したのです。
ルハンナさんは僕たちの友人のアニーニさんのお母さん。
これ以上無いってくらいに、院長さんなのです。
そしてここにも『ゲートルーム』という『転送』施設が配備されております。
僕たちは『コニタン』こと個人認証用単一素材ブレスレットを鍵として、ある程度自由に利用できるのですが、それ以外の方は申請制にて利用可能だそうです。
孤児院の施設管理責任者のフラットさんが、『ゲートルーム』の管理も担当してくれることになりました。
フラットさんは、差別やひいきをしないだけじゃ無く、相手の身分や境遇によって態度を変えない信頼できる真面目な人との評判が広まっていて、施設内のみならず街でも結構な有名人になっているそうです。
「僕自身は前と変わっていないのに、なんでみんながこんなに良くしてくれるんだろう」
フラットさんは不思議がっていましたが、僕たちはこうなるって分かっていましたからね。
孤児院の寮母さんはスズナさん。
調理から防犯までまさに八面六臂の大活躍、何よりも子供たちからの懐かれ方が半端無いとか。
とにかく魅力的なスズナさんは、最初は職員男性陣の注目の的だったそうですが、フラットさんとの間柄が知れ渡るとちょっかいを出す人も居なくなって、むしろみんながふたりを応援してくれているのだとか。
フラットさんは聖人君子の鑑みたいに欲が無い人だし、
スズナさんは良妻賢母の鑑みたいな世話焼きさんだし、
みんなが応援したくなっちゃう気持ち、分かっちゃうよね。
そんな感じで『ヴェルクリの家』は始まったのです。




