10 事件
そんな感じの、異世界暮らし。
ちょっとお忙しぎみの冒険者活動と、
ちょっとご無沙汰ぎみの講師活動。
まあ、いつも通り、僕なりのペースで。
などと呑気していたからバチが当たったのでしょうか、
大変な事件に巻き込まれてしまったのです。
指名依頼はモノカから。
依頼内容は『乙女たちをおびやかす謎の敵の討伐』
場所はアルセリア王都。
友人アランさんの奥さんユイさんの故郷です。
最近、街に出没している変質者、
そいつは、女性からあるモノを盗むのだとか。
それは『乙女の守り樹』
この世界で女の子が産まれた時に、
親御さんが持たせてくれた大切な守り刀。
その変質者は、なぜかそれのみを盗んでいくのだそうです。
活動を始めたのは、最近。
ひとり歩きしている女性が突然意識を失い、
気が付くと『乙女の守り樹』のみを奪われているというめっちゃ怖い事件。
女性たちにはそれ以外の被害が全く無いこと、
アルセリア王都内のみとはいえ、犯行現場が広範囲すぎて警備の手が回らないこと、
王都の衛兵さんたちも巡回司法官さんたちも、犯人の影すら捉えられずお手上げ状態だそうです。
すごく許せない犯行だけど、なんで指名依頼が僕なの、モノカ?
「その、おとり捜査……」
えーと、女性しか狙わないヤツって聞いたんだけど、
「女性の衛兵さんや女性司法官がおとりをやってみたんだけど、みんな眠らされちゃって」
「クロの診断では、女性にしか効かない特殊な薬品を使ってるみたいだって」
それで僕がおとり……
「駄目、かな……」
うん、やってみるよ。
ただ知っての通り、僕の実力じゃ捕縛とかは難しいと思うから、しっかり事前準備しないとね。
「ありがとう、カミス……」
そして僕とモノカのふたりによる、アルセリア王都城下街での巡回おとり作戦、開始です。
おとりは……僕。
モノカは離れたところからの監視。
同様の作戦を巡回司法官さんたちも行っているそうですが、
なにせこの王都は広いのです。
作戦の性格上、人海戦術を取るわけにもいかず、
僕たちはただひたすら歩き回るのみ。
もちろん怪しまれないようにしながら、なのですが、
怪しい格好で怪しまれないように振る舞うって、
神経すり減るどころじゃないのですよ。
そして……