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雪の降る別れの日

 朝、目覚めると、カーテンの隙間から太陽の日差しが差し込んでいた。頭の中に昨日の夜聞いていた曲が思い浮かぶ。目覚まし時計を確認すると、朝の九時だった。休日にしては早く起きた方だ。

 キッチンへ行って、ホウレンソウとベーコンを取り出して、フライパンで炒めた。塩と胡椒で味をつけて、皿に盛る。パックのごはんを電子レンジで温め、冷蔵庫から納豆を一パック取り出す。

 やかんでお湯を沸かして、パックの緑茶を淹れた。

 朝食ができあがると、リビングで食べた。窓の外は雪が降っている。粉雪だった。

 今日は京子がアメリカに行く日だった。彼女は一年間、仕事でアメリカのボストンにある支社で働くことになっている。

 僕と京子は付き合っていた。大学生の頃に知り合った。

 文芸サークルで、一緒に入った同期だった。部員二十人弱のサークルでは週に一度、書いた小説を互いに批評し合った。僕は大学の文学部を受験し、文学を学ぶうちに小説を書いてみたくなった。それで、二年生になった四月にサークルに入った。

 京子は大学の新入生だった。背が低くて少しぽっちゃりしていると彼女自身は言っていたが、僕には健康的な体形に見えた。彼女は一学年僕より下だった。僕は先輩ということになったが、話すうちに気にならなくなった。

 朝食を食べ終えると、シンクで皿を洗った。部屋の中はずいぶんと簡素だった。1LDKだったが、今思うとワンルームでもよかったかもしれない。

 たまっていた洗濯物を洗濯機の中に入れて洗い、床をワイパーで拭いた。

 今日やる大方の家事が終わると、ジャンパーを着て出かける準備をした。

 京子が飛行機で出発するまでまだ時間があるが、その前に食事をする約束だった。

 部屋を出て、鍵を閉め、外に出た。ビニール傘を差しながら、駅まで歩いて行った。駅に着くと、空港まで、急行電車に乗った。空港に着く間、窓の外の粉雪を眺めていた。空港に着くと、待ち合わせ場所に京子が立っていた。茶色のコートを着て、ピンク色のマフラーを巻いている。

「待った?」と僕は聞いた。

「ううん。行こうか」

 僕らは空港の中にあるカフェに入った。ハンバーガーとコーヒーを二人分注文した。

「これからアメリカか」と僕は言った。

「向こうについたら電話するから」

「なんだか寂しくなるな」

「一年だからさ」

 僕らはカフェの中で話をし、ハンバーガーを食べた。雪の降る日の別れだった。


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