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秘密の仕事

 ベッドの中で、僕らは交わっていた。中年の女性は体を震わせている。僕は行為の最中でも与えられた任務を全うしようと心がけていた。

「ねえ、もう帰るの?」

「ええ。これからまだ仕事があるので」

「そう。大変ね」

 僕らはキスをした。僕は去り際に「あなたの写真を撮っていいですか?」と聞いた。

「いいけど、どうするのよ?」

「僕も男ですから、あなたを思い出して、一人でするのです」

「わかったわ」

 女性はさっき着た服を脱いだ。僕は何もまとっていない女性の写真を撮った。

 これで任務は完了だ。

 ホテルの部屋を僕は先に後にした。

 タクシーでオフィスまで向かう。今頃、女性は何を思っているのだろう。

 窓の外のビル街。皆、様々な理由を抱えながら生きている。僕がこういう仕事をしていることは誰にも言っていない。過去の同級生には投資ファンドで働いていると嘘をついていた。

 タクシーがオフィスの前についた。僕は降りて料金を払う。小さなビルの三階にオフィスがある。僕は扉を開ける。

「どうだ?」

 社長が僕に声をかける。

「うまくいきました」

「これで、離婚も上手くいくだろう。皆、欲望を抱えながら、行き場のない思いを感じているものだ。お前は男性アイドルの事務所にいたくらい容姿がいいからな」

 カメラのデータを受け取った社長はパソコンを開いて、画像を確認した。

「これで問題ない」

「では、失礼します」

 僕はオフィスを出て、家に帰ることにした。

 またタクシーに乗り、都心の高層マンションへ向かう。僕がこのような生活を送れるのも全て社長のおかげだ。社長はアイドル事務所でくすぶっていた僕を拾ってくれた。元々そういう人材を探していたということで、僕と利害が一致した。様々な仕事をした。ホストをやったこともあったし、不法侵入をしたこともあった。

 高層マンションのエントランスを通りすぎる。郵便物は来ていないようだ。エレベーターに乗り、上層階へ向かう。

 いったい人生とはなんだろう。皆、平穏な生活を望んでいるのだろうか。少なくとも社長は違う。彼は何かの目的があって、今の仕事をしている。思い返せば、彼はほとんど欲を持たない。

 ドアを開けると、妻の京子が顔を出した。

「まだ、起きてたんだ」と僕は言った。

「そろそろ帰ってくると思ったからさ」

 僕は靴を脱ぎ、部屋に入った。京子はそこそこ美人で人当たりがよかった。僕らは高校生の頃の同級生だ。たまたま大学生の頃、同窓会で会って付き合うことになった。


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