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第2話 1
天使様に今のは何かを聞こうとすると、『僕』のお腹はぐぅ、と大きな音を立てる。
『僕』は慌ててお腹を押さえるけれど、聞こえたようだ。
天使様は笑うことなく心配そうにこちらを見つめている。
その純粋な心配が少し恥ずかしくて、『僕』はなにも言えなかった。
「お腹すいたなぁ……」
思えば学校から帰ってから何も食べていない、何も飲んでもいない。
昨晩は随分と気が張っていたが、ここにきてようやく緊張の糸がほどけてしまったのもある。
天使様は平気なんだろうか。
『僕』がここにきてから天使様だって何も口にしていない。
天使様は不安げな様子でどこかを指差す。
指の先は鉄格子のついた窓だ。
白んでいた空が少しずつ青くなっていく。
いつもなら『僕』が目を覚ます頃合いだった。