3 Gambol wrath
春昼、なんて難しい言葉は使わずとも分かり合える気持ちの良い情景。
何故かスーツを着込んだ俺はベンチに座って休憩時間を満喫していた。
と言っても人を待っているだけなのだが。
どうしても昼に一度だけ会いたいというので、調査をしながらゆっくりと歩いてきた。
「おーい! お茶ー! 買ってきたよー!」
「大きな声でー! 言わなくてもー! 聞こえますー!」
ペットボトルを2本とドーナツの紙袋を持った唯愛が、こちらに走ってきてくれる。
彼女の笑顔には、やはり全てを浮遊させるような不思議なパワーのようなものがある。
上手い表現ができないのが非常にもどかしい。
じゃんけんの上で苺が乗っている方をとった。
滅茶苦茶断られたが、何を要求されるかわかったもんじゃないのでお金だけ払っておく。
「サンキュ……。今だけはお前が世界一の天使に見えるよ……」
「えっ!? 何でそんな急にそんな事!? もしかして昨日ので意識しちゃったの!?」 「お茶くれたからに決まってんだろ馬鹿」
勘違いヒロインに感謝を込めて麦茶を飲み干した。
美味い。
今日調べようと言ったことの一つに、犯行手段の仮説の確認というのがあった。
その活動として水瀬家から半径三百メートルくらいの家族構成を調べたのだ。
現在朝の8時から作業して5時間経過、進捗は35%と言った感じ。正直このままのペースで行くと間に合わない。
ん? 何でんなもん調べてるんだって?
“証言者”が実在したかどうかを確かめるため。
「朝からずっと動いてたみたいだけど、何してたの?」
ご都合主義とはまさに今このためだけに生まれた言葉なのか。
奇跡に深く感謝して、ゆっくりと話していく。
「俺は犯行に及んだ人間が一人である可能性は低いと考えていた。一人での犯行であれば、パトロールしてる警官を誤魔化すことは出来ないからな」 「うんうん」
水やりしてるおばあさんとかだったら行けたかもしれないが、普遍的な人間の目が人を殺した後の人間を普遍的にみる訳が無い。
ややこしさを解くと、複数人でじゃ無いと不可能っぽく見える。
「だが、周りにいた人々の証言を聞く感じ犯人ってのは結構絞れそうにない。最初に天彩さんを見守ってたって奴をはじめ、極端に言ってしまえばあの人だかりの中にいた人は全員犯人の可能性があるんだよ」 「確かに、あの中に入れば見つかりにくいかも」
ほとんどはもう会う事が出来なさそうだったので、悩んだ。
あそこで収拾できなかった情報は、この後犯人を捕まえでもしない限り入手不可能に近い。
そこで、絞りからふるいに変更した。
「虱潰しに探していく方針から、炙り出す方針に変えた。そうすれば自ずと犯人とやらも出てくるだろうと踏んだという事だ」
チョコレートの部分を食べながらこくこくと頷いた唯愛は。
「つまり正攻法から汚い方法に変えたと」 「やめてその言い方」
実際汚れてるのは、間違いなく人間を殺そうとした奴らなので気にしない気にしない。
「ん? でも、そうしたらそこまで動かなくて良いんじゃ? そもそも今日一体何をしてたのかを全く説明されて無い気がする」
「いい着眼点だ。ではなぜ俺がこんなにも忙しくしているのか、それを行う理由と共に教えてやろう」
凄くワクワクした視線を向けられる。
お母さんの容態が回復してきたからなのか、またこの元気さが戻って来たな。
嬉しさと悲しさが混ざり合う複雑な心境である。
それならこちらも応えてやろうじゃないかと、気合も入る。
「証言者が全員グルだったら、上手ーく話が進むんじゃないかと思ってな」
「あぁー! 確かにそれなら反抗しててもバレない!」
「そんな展開が本当にあるのかどうか気になったので、現在一軒一軒回って俺が会った奴は存在してるのかどうかというのを調べてるんだよ。時間がかかるのも納得だろ?」
結局馬鹿正直な虱潰しな訳だが、闇雲に犯人を捜すより100億倍良質だ。
終わらなさそうで少し絶望しているが。
みんな「市役所」って単語を出せばさっさと出してくれると思ってた。
案外そうもいかない事に気づいてももう遅く。
もちもちした生地を齧る。
物欲しそうな目で見つめる唯愛を見て、少し分ける。
「大丈夫? どうせゴールデンウィーク終わるくらいに何か起こそうとしてるんだろうから、今日の内にその作業終わらないと大変じゃない?」
「起こすと決めつけないでくれ」
それに関してはどんな手を使ってでも否定させてもらう。
一番の不確定要素となられてしまっては困る。
「起こすよ。だってそういう顔してるもん」
そう言って笑い、隣にゆっくり座る。
「目的は知らないで良いから協力させてくれない?」
「お前に何のメリットも無いから嫌だ」
「あるよ。あなたの役に立てるっていう私にとって一番のアドバンテージが」
「それはこっちからすれば恐怖でしか無いんだよ。何かあった時に俺のせいだってなるのも嫌だし」
「んー! 今回何の役にも立ってない! 折角緊急時は手伝えるって言ってくれたのに!」
周りを気にせず喚く。
人の視線が痛い。
うわぁこいつ泣かせてるよって目だなぁ。
違うんです。勝手にキレられただけなんです、何ならこの子のためなんです。
「協力を認めなければ、貴方の恥ずかしい話一個づつ話してくよ? それくらい沢山あるんだから!」
「ほう、ぜひ聞かせて貰おうか」 「えっ!?」
こいつが知ってる恥ずかしい話なんて当の本人にとっちゃ何でも無いな。
「実は小学校の頃は自分の事名前で呼んでた、とか?」 「それが?」
「実は中学生の頃は自分の事神の名で呼んでた、とか?」 「それが?」
「実は高校生の頃は……自分の事イケメンだと思ってたとか?」 「それは無いな」
「そもそも自分の事どんな名前で呼んでた系統で揃えるならちゃんとコンボさせろ、2コンボで止まるな」 「だって焦って思い浮かばなかったんだもん。いくら何でも鋼のメンタル過ぎるでしょ」
なんかもうどうでも良くなった。時間の経過はやっぱり素晴らしい。
堂々とした態度で構える。
こいつの事だ、どうせ何の策も無くただ感情的に突っ込んだに決まってる。
今に諦めるだろう。
……カイジの有利な側の気分だ。
「ねぇ、本当に駄目?」
もっと怒鳴る方向性で来るのかと思ったが、泣きのモードに入ったようだ。
惑わされるな俺。これは半分演技だ。
いや今までの感じ的に半分本気かもしれないけど、流石に純度100%の涙では無い。
「別にいいじゃん、少しでも楽になったら良いなと思ってるだけなのに」
ただ何をするでも無く、こちらを見つめてくる。
深呼吸を忘れるな俺。
ここで折れたら、もうそれはこの世の全てに敗北したのと同意義だ。
だからここだけは絶対に良いと言ってはいけない。
こいつは普段からうるさい奴だ、こんな演技似合わない……
「……じゃあ、少しだけな」
あーあ。
どうしてもこいつの涙だけは昔から勝てない。
他の人間のだったらいくらでも無表情で眺められるんだがなぁ。
「やったぁ! 天才!」
溜息を吐く。なんて奴だ。
「やり方が姑息だぞ。勝てないの知っててやってるだろ」
すると彼女はキレッキレのどや顔で。
「やめてその言い方」
そう言えば、少し前にそんな事を自分で言ってた気がするな。
どうやらすべて彼女の戦術だったらしい。
「わかったわかった。それならこの後の作業は俺とお前で3:1な」
せめてこっち多めでお願いします。
喜びの舞を踊っていた唯愛は、最後の締めに空中で綺麗に2回転ジャンプを決めてパタッと着地した。
その顔は笑顔に包まれている。
ならもうそれでおっけーかと、麻痺してしまった俺は立ち上がる。
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「……ありがとうございました、失礼いたします」
なるべく丁寧にお辞儀をして、その場から立ち去る。
ワクワクしながらメモを数えた。
「ひぃふぅみぃやぁ……、よし仕事終わりぃ!」
「やっと終わったのか。待ちくたびれたぞ」 「終わったの?」 「まだ」
じゃあ何で威張った?
お仕事を貰って早5時間が経過。
やっと自分の仕事を終えられた私は、ぐったりしている彼の横に座った。
「でも後10件くらいなんでしょ? じゃあ行ってくるから貸して」
「嫌だ! ここで借りを作られると後々めんどくさそうだ、そもそも自分のタスクを増やしたのは自分なんだから一人でやってくる!」
ふらふらと歩いて行った。
「何でそうなるのかなぁ」
夕焼けの下で、呆れた息を吐く。
昔からかなり頑固だった。
家族といるような所もあまり見たことが無いが、きっとそういった距離が近い人に対してはもっとそうなのだろう。
そう。
彼が父親以外の親族といる所は、一切記憶に無い。
私も今でこそ似たような生活なものの、小さい時は母親とずっと一緒にいたと思う。
よくお母さんに「彼を大事にしなさい」と言われ続けていたのも思い出した。
私の母があの子にどんな感情を持っていたのか定かでは無いが、まだ従順な子供だった私はそれを聞き入れて沢山遊んだ。
地味な子ではあったが、実際に話してみると中々面白い子だった。
常に人をじっくり観察しているような深く黒い瞳は、なぜだか私を安心させた。
きっとこの人は私の欠けた部分を埋めてくれる人なんだと勝手に考えていた。実際今でもそうかもしれない。
だが、彼は私が見て欲しい目で私を見ない。
“あの事件”から生まれた子供だと、誰もが指をさしたし誰もが同情と軽蔑の目で見たように。
彼が私を好く事なんて、無いと初めから決まっていたのだ。
一度だけ、彼を本気で怒らせたことがある。
まるでいつもと人が変わったように牙を剝き、誰かれ構わず危害を加えた。
そして3分くらいして倒れた。
普段のやられたらやり返す主義が、根本から大きく崩れた。
その時の一人称は「俺」では無く「私」だった。
あれ以来、彼の前で中途半端に何かすることを避けるようになった気がする。
もう一度あれを見てしまったら自分の中で何かが溢れ出す。
そんな感覚と本能的な恐怖とが混ざり合っていた。
難しい事は考えないし、取り敢えず笑うところから何かが始まると思っている。
だが、彼の前ではどうなのだろうと最近感じていた。
「終わったー! 俺の勝ち! 何で負けたのか明日までに考えといてくださいー!」
思わず飲んでいたオレンジジュースを吹き出しかけてしまう。
そういう、日々の小さな笑いを取ってしまうところとかも大好きだ。
あの人間をどんな目で見ようとも、それによって私がどういう風に言われようとも。
この気持ちだけは変えられない。
電子音が、鳴った。
+++++++++++++++++++++++++++++++
「ごめんね、急にかかって来たもんで」
「全く以って大丈夫だ。天彩さんからか?」
やっと仕事終わったよ。
途中からやっぱ1:1にした方が良かったかなとか思ったのだが、自分で決めたことをそう簡単に曲げてしまうと言うのは何だかなぁ。
特にこいつの前ではそういうとこを見せたくない。
まぁ、意識してないところで沢山見せてしまっている気もする。
「と言っても足がほとんど動かねぇ。流石の俺でもここまで動いたのは久しぶりだな」
「流石の俺って、普段どんな生活してるか言ってみなよ」 「お墓参りだよ」 「冗談きついよ兄ちゃん!」
割かし洒落にならないし怒る奴もいるが、お前に父親の何がわかるんだと思って気にしないでいる。
……俺もどんな人かはあんまりわからない。
幼い頃からその人に育てられてきたと言う事しか知らない。
どんな仕事をしてて、何が好きで、どうやって俺の所まで来たのかも。
血が繋がっているかも定かじゃ無いし、何なら多分繋がって無い。
その頃から俺は家事を見よう見まねでやり始めていたので、実質一緒の部屋にいるだけの存在。
確かにお金を出してくれた事には感謝しているが、中々にあった貯金を貰った今となってはそれも薄い。
相変わらず、俺は屑だな。
少し話が逸れた。
「で? 俺が言った人物に該当しそうなのはいたか?」
そうそうこれですよ。
それを調べるためだけに、休日丸一日を費やしたのだから。
「えっと、『オレンジの髪でパーマをかけた、いかにもなマダム』が5人いて、その内の一人はあなたの事知ってたよ」
「じゃあそいつは白確定演出、とまではいかないが何かあった時は考えさせて貰う事にしよう」
犯人であれば自分からそういう発言はしないだろう。
あの優しそうな彼女が人を殺している所をあまり想像できない。
後これはまだ確定事項では無いが、犯人は男性である可能性が高かったんだもんな。
……ちなみに、オレンジのパーマは今のマダム界の流行なのだろうか。
「あとはねぇ……。そうだ、暖來君はいなかった」
あの時の高校生か。
一応身分証明になるかと思って、生徒手帳を見せてもらったのだ。
住所までは詳しく見えなかったものの、この近く、少なくとも今回調べた範囲内である事くらいは確認できた。
「やのただんき」かぁ。
何かありそうな珍しい名前ではある。
「一応、あそこの周りをパトロールしそうな交番所を5件くらい当たったがノーヒット。これは余計な情報だが、顔写真だけでもとあいつらを説得させる時間が一番苦痛だった」
名前まではわからなかったので、顔の特徴をしっかりと捉えた。
AIのようにアルゴリズムを把握することは出来ないが、耳の形や口の形など変えにくい部分だろうと予測した場所をうまーく暗記しただけだ。
救いとしては、全員が全員違うと言い切れるほどキャラの濃さそうな奴らだったくらいか。
あいつら、最終的には上の方で俺の情報を共有しやがった。
しかも俺が大人に見えないと言い出し、「本当に君は区役所の人間なんだね?」と聞かれる始末。
あいつらさえいなければもっと早く終わったのに。
と一瞬思ったが、利益が大きいから許そうと考えが変わる。
「という事は、あの警察官は本物じゃなかった訳だ。これは中々大きな収穫だぜ?」
彼が唯一証言していた、10人の男たちのアリバイが崩れる事になる。
蓋が外れたようなものだ。
誰が通って誰が通っていないのかも分からなくなってしまった。
「やっぱり他にも仲間がいるのかな?」
唯愛が難しい顔で聞いてくる。
「恐らくそうだとは思うが、問題はこいつらの尻尾をどう掴むかだよな。どこに散らばったかもわからんものを一から拾い集めるなんて無理だ」
何か彼らがポンッと引っかかりそうな罠、というのも思いつかない。
人手があれば脳筋でごり押すこともできるのだが……
「あのさ、これは多分あんまり良くない方法なんだけどさ」
ぼそっと呟く声。
言うべきかどうか迷っている様子だ。
策なんてあるに越した事はねぇ。
「そんなもん今更気にしてられるか、犯罪紛いの事してんだよこっちもあっちも」
怒らないでね、と警告してから。
「お金、ある?」
うん、金欠。
+++++++++++++++++++++++++++++++
この辺かなぁと思った場所にそのままいられると、それはそれで気持ち悪いと言うもので。
「あ? お前は確か俺の下を全員ぶっ潰した奴じゃねぇか、こんなとこに何の用だ? 自分が今何してんのかわかってんのか?」
唯愛が黙って目を逸らし、俺の後ろに隠れた。
……どうした作戦提唱者。
俺たちを襲っていた集団を金と嘘でうまく買収して利用する。
それなりに体力はあるだろうし、非人道的なところを除けば完璧な作戦だ。
無論犯人の判明確率上昇に目が眩んだ俺たちにそんなもんはある訳も無く。
湿布を買い、お金を下ろし、ここまで気合と根性で辿り着いた。
「まぁまぁ、そうすぐに怒るな。ぶっ潰したと言えるほどの圧勝じゃ無かった、其れなりに歯ごたえのある奴らだったよ」
実際はマジでダメージを追わないレベルの圧勝。
「もう一度聞く。ここに何をしに来た?」
目力を効かせて睨みかかってくる。
一人だけみんなが見てる舞台に上がって笑いものになる。
指をさされるというのはそういう感覚に近い。
プレッシャーというのも、結局はそういう類なのだ。
「お前らの力が借りたくって来た、と言ったら笑うか?」
相手も大分大きかったが、ぎりぎり上が取れたので頑張って睨み返す。
ちなみに唯愛は俺の脇腹を掴んでそこから顔を出して観察している。くすぐったい。
「はん! 敵にホイホイ手を貸すような阿保がいると思うのか!?」
その台詞は既に予測済みだ。
右側の少女の頭に触れて合図しておく。
「いると思うから来てんだよ」
そして、バッグから百万円を投げさせた。
一瞬で状況を察知し、キャッチしようとするリーゼント男。
「まだな?」
無防備になってくれた腹を、思いっきり蹴る。
2メートルくらい吹き飛んで、倒れ込んでしまった。
根性の無い奴め。
「これが欲しかったら協力してくれ。無論これだけじゃない、合計額は一千万だ」
ボストンバッグを受け取って、開く。
勿論偽物の中に本物を忍ばせてあるわけだが、最初に投げて現在唯愛が回収した100万は俺と唯愛の自腹であり、全て本物だ。
貯金を初めて大きく崩した。
特にあまりする必要も無かったのにやっていたバイトのお陰で、普通に生活できる金額を所持で来ていたのだ。
まぁ、どうせ何ともないんだったら豪華にやってやろうって感じだ。提案者は俺。
「それに加えてある条件を飲むのなら、考えないことも無いな」
「一応聞くだけ聞いてやるよ。何だ?」
こいつの言う事なんてどうせ下らないと思ったが、折角だから。
だが、そんなチャンスも彼は簡単に潰してしまった。
「そこの女を引き渡せ、その依頼が終わるまでこちらであ」
最後までは聞けなかった。
顔面を狙う。
足が疲れてはいたのだが、湿布の効き目が良くって高く上げる事が出来た。
何か喋ろうとするので、殴って口を塞ぐ。
そのまま、偶々まだ持っていたボストンバッグで体を順番に殴りつけていく。
眼、鼻、口、胸、腰、足。
なるべく精いっぱいの力を込めたが、無駄に筋肉があるせいで一周じゃ死ななかった。
もう一周しようと息継ぎをした時。
「止まって」
いつもより涼やかな唯愛の声で、現実に引き戻される。
「わりぃわりぃ。つい、ね」
嫌いなものに出逢うと、必ずこうなってしまう。
どうしても許せない時に限るが、こうやって殺そうとする事もある。
体が無意識に動くのだ。
何かを否定しようと、何かを認めたく無くて、潰そうとする。
唯愛は俺に返事をせずに、前に出て聞いた。
「この一千万で雇われてくれるんだったら、明日の朝7時にもう一度この場所で会いましょう。仲間を全員連れてきて。わかった?」
まるで感情の籠っていない声。
それが逆にリアリティを感じさせたのか、男はただひたすらに頷いた。
何も言わずに彼女はそこから去って行った。
ボストンバッグとお金を回収してから、空を仰ぐ。
暗い空気の流れる路地裏。
それを目いっぱい吸い込めば楽になれる気がして、笑っていた。
狂気、なんて分かりやすい言葉では表せないような闇に落ちていく。
お読みくださりありがとうございます。作者のあにーです。
一回間違えて別の奴に投稿してました。
本当にすいません……
GWに免じて許してやってください。お願い致します。
次回 今すぐに投稿しますので少々お待ちください。