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短編集

パーティから追放されたけど、自称チートなドラゴンパワーネックレスを手に入れたのでもう遅い

作者: 忠柚木烈
掲載日:2021/04/09

「あー、どうしよ」


 俺は途方に暮れてた。

 というのもさっき。

 所属してた冒険者パーティを。

 追放されてしまったからだ。


 冒険者は実力主義。

 なにせ互いに命を掛けてる。

 お義理とか忖度なんてものはない。

 どこまでもシビアにお互いを評価する。


 だからマズイ。

 別にパーティにお貴族様がいて。

 不興を買ったなんて事もない。

 俺は冷静な判断で追放されたって訳だ。


 問題は今後どうやっていくかだ。

 要は役立たずの烙印を押されたって事。

 そんな不名誉な話がすぐに広まるだろう。

 新しい仲間を見つけるのも難しくなる。


 噂が広まる前に仲間を探す?

 仲間になった後に噂が聞こえたらアウトだろ。

 騙したなって怒鳴られて殴られるのがオチだ。


 じゃあソロでやっていく?

 それこそ冗談だろ。

 1人でできる事に限界があるから、パーティを組むんだ。


 冒険者なんていうが実際は、金次第でなんでもやる人のクズだ。

 どこにも行き場のない、明日の生活も知れない根無し草。

 そんな信用できない奴なのに、手を組まなきゃいけない。


 むしろそんな、信用ならないクズだからこそ。

 ある意味じゃ誰よりも、信用を大事にするし、噂は集める。

 そうじゃなきゃ、下手な奴と組んで、酷い目に遭うからな。


 やっぱりここを離れるしかないか。

 噂の届かない新天地で、新たな一歩を。

 根無し草の強みってところだ。


 それならカバーストーリーが必要か。

 冒険者に事情を詮索しないなんて不文律はない。

 特に余所者とか新参者に、向けられる目は厳しい。

 だってそうだろ?


 もしかしたらそいつは。

 仲間を裏切って殺して。

 地元にいられなくなって。

 流れてきたのかもしれないんだから。


 詮索しないなんて手はありえない。

 本人の口から出た内容が、本当の事かはともかく。

 少なくとも話さえ聞けばそいつが。

 話を取り繕う頭のある奴なのか。

 ただの考えなしのバカなのかぐらいはわかる。


 俺がなんで住み慣れた土地を離れてきたのか。

 それを納得させる話をでっち上げた方がいい。


「小道具でも探すか………」


 例えば安物の木彫り細工でも買って。

 これはかつて故郷の幼馴染が持ってた物で。

 質に流れていたのを偶然見付けたんだ。

 故郷に戻ってもその幼馴染はもういなくなってたから探してる。


 ………なんて触れ回ってもいいだろ。

 冒険者なんてバカだから。

 そういう人情話には弱いだろうしな。


 そうやって冷やかしがてら。

 魔法道具屋を覗いて見る。

 相手の興味を引くのは、大事だからな。

 役立たずな道具でも、話の掴みにぐらいは使えるだろう。


「うへぇ………」


 そう思って店内へ入ると、雑多に物が並んでた。

 一目見たところでは、何に使う物なのか推測できない。

 これは目を覆うマスクか?


「あー、何々?」


 隣の張り紙に、説明が書いてあるようなので読んでみる。


 奇跡の透視マスク?

 これをかければあら不思議?

 どんな服でも透けて見える?

 エーテルを応用した最新技術?

 遠見の魔法のメカニズムを解析して実現した?


「なんだこりゃ?」


 なんて頭が悪い。

 この魔法万能世紀で。

 こんなのに騙されるアホがいるのか。

 むしろ話の種としては使いやすいかもしれ………


「ハァ!?15000マニーだとッ!?」


 思わず叫んじまった!

 クジナート工房の誇る名匠カシナートが!

 鍛えた剣並の値段がついてるじゃねぇか!


 こんなインチキ商品に!

 そんな代金払う奴の気が知れねぇ!

 改めて棚を見回すと途端に胡散臭く見えてくる!


「裏記録石ねぇ」


 当店だから入手できた数量限定!

 王国では決して見られない秘密!

 帝国だからこそ記録できた映像!

 他にないクリアな映像と大迫力!

 モザイクは一切なし!クッキリ鮮明!

 隠された神秘のヴェールの奥を解き明かす!


 ………懐かしいなぁ、オイ。

 なんともいえない苦い表情になる。

 記録石は映像を記録できる魔法道具である。

 そして裏記録石とはえっちな光景を納めた記録石………ではない。


 外国の風景をただ記録しただけの記録石である。

 多分煽り文からすると帝国の観光名所的なやつ。

 なんでそんなもに裏なんて禁制品みたいな名前がついてるか?

 そりゃアホを勘違いさせる為だな。


 裏なんて名前がついた記録石!

 きっとエロエロでアヘアヘな映像が!

 余すところなく納められてるに違いない!

 だってこんなに高い値段がするしきっとそうだ!


 そして期待したエロエロな光景とは裏腹な。

 風光明媚な映像を呆然と眺めた後に気付くんだ。

 よく考えたらえっちって説明はされてなかったんだと。

 勝手に期待して勝手に騙されただけの独り相撲だと。


 何よりどう自分の正当性を訴えるつもりだ?

 えっちだと思ったのにえっちくなかったから金返せ?

 若いなぁと笑われるのが関の山だろ?

 絶対えっちですと説明されてたならまだしも?


 ………だからあのときも泣き寝入りしたんだよなぁ。

 みんなで必死に貯めた金出し合ったのにさ。

 若かりし頃の苦い思い出だ。


「はぁ」


 クソデカ溜息をついて目を逸らす。

 すると少し奇抜なネックレスが目に入る。

 今度はなんなんだ。


 ドラゴンパワーネックレス?

 ドラゴンの力が秘めたる才能と?

 前世の記憶を呼び覚ます?

 次々寄せられる喜びの声?


 しがない支援職だった僕は?

 ある日パーティを追放された挙句に?

 結婚の約束をしていた幼馴染を?

 いけ好かないクソイケメンに寝取られて?

 失意のどん底を味わっていた時に?

 運命に導かれてこのペンダントに出会いました?

 これを身に着けてからというもの?

 突然前世の記憶に目覚め?

 超強力なチートスキルを使えるようになり?

 突然色んな美少女が周りに侍るようになり?

 やる事なす事全部が評価されるようになり?

 目も眩む大金が次々と舞い込むようになり?

 ついでに身長が10cmも伸びました?

 もうネックレス無しの生活なんて考えられません?

 (王都在住のカゲキャさん)


 王子と婚約関係にあった高位貴族令嬢だった私は?

 冤罪をかけられて一方的に断罪され?

 かつての婚約者をポッと出の平民に寝取られて?

 失意のどん底を味わっていた時に?

 運命に導かれてこのペンダントに出会いました?

 これを身に着けてからというもの?

 突然前世の記憶に目覚め?

 領地改革のアイデアが次々思い浮かぶようになり?

 突然ハイスペックイケメン達に溺愛されるようになり?

 やる事なす事全部が評価されるようになり?

 目も眩む大金が次々と舞い込むようになり?

 ついでに元婚約者は廃嫡されました?

 もうネックレス無しの生活なんて考えられません?

 (王都在住のユメジョシさん)


 金貨が敷き詰められた風呂の中で。

 露出度の高い水着を着た、美少女エルフを両側に侍らせる。

 THE成功者って感じの男の絵が展示されてる。


 隣にはやたらキラキラしいイケメンに。

 守られるように囲われた貴族令嬢らしき女の絵。


「うん、コレだな」


 宝玉を鷲掴みする龍の爪みたいなデザインの、ネックレスを手に取る。


 決め手は何かって。

 龍の眼みたいな石が、目を引いたからな。

 派手で目を引くなら、それでもう、目的は達成されてる。


 しかもお値段4000マニー。

 冒険者の成功は、身に着ける物に現れる。


 外見かみずぼらしい奴は、食うもので手一杯。

 外見が洗練されてる奴は、懐に余裕がある。

 余裕がある=成功者、という事に他ならない。


 つまり冒険者としての箔付けには。

 装飾品はちょうどいいって訳だ。


「………それに」


 このデザイン。

 童心を刺激されるというか。

 心に突き刺さるものがあるしな。


 話のタネになり。

 成功のステイタスとなり。

 デザインも気に入ったなら。

 いい買い物だろう。




 ………なんて言ってたのも今は昔。

 俺は今、途轍もなく後悔してる。


「ヘイ、ジョージ。見ろよあそこにいる奴、ドラゴンパワーネックレスなんかしてるぞ」

「なんだってサム、あのネックレスを身に着けてる奴がいるなんて、とても信じられないよ」


「HAHAHA!なんたって別名、田舎者の証だからな!」

「わずか200マニーの石を、誇らしげに首から下げるなんてね!」


「俺なら恥ずかしくって、外を歩くなんてできないぜ!」

「それは仕方ないさサム。なんたって彼は………」


「「田舎者なんだからな!HAHAHA!」」


 ………死にたい。

 このネックレス、なんと有名なボッタクリアイテムだったらしい。

 お陰で俺は、おバカな田舎者のレッテルを貼られている有様。




 それから数年後。


 同じくドラゴンパワーネックレスを身に着けた。

 田舎者2号と田舎者3号と出会って意気投合し。


「「「俺達を笑った奴を絶対見返してやる!」」」

と、固く誓い合い。

 そこそこ名の知れたパーティにのし上がったのは別のお話。


 今では俺達の出会う、切っ掛けになったとはいえ。

 苦い思い出である、ネックレスの話は禁句だったりする。

 ある日そんな俺達に、露天売りが声を掛けてきた。


「そこの冒険者のお兄さん!王都で流行のパワーストーンネックレスはどうだい!」


 俺達は泣きながら、同時に飛び上がって、こう叫んだ。


「「「ネックレスはもうこりごりだよ〜!」」」




 ………その様子がよっぽど面白かったのか。

 俺達が大粒の涙を流しながら飛び上がった時の映像が。

 顔を丸く残す様に塗り潰されるという記録石が大流行を生んで。

 こりごりトリオと呼ばれるようになったのもまた別のお話。


 ちゃんちゃん♪


昔の漫画雑誌の通販ページにあった、なんとかネックレスの効能って、丸っきりチーレム無双モノのテンプレだなと思って、思いつきのみでやってみました。


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