表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

4. º*≅¿《ポンチコ》の決意

 少し傾いた秋の日差し。

 澄んだ空気の中、ふわり、と、誰もが幸せになるようなパンの匂いが漂い、女の子のお腹がぐぐぅ、と鳴った。


<ははぁ。お腹が空いたので、パンを買いに来たのですね。そんなところも…… イイです……>


 金髪ツインテールから落ちないよう気を付けながら、小さく跳びはねるº*≅¿(ポンチコ)


 ところが、女の子は店の前でピタリと足を止めてしまった。


<あ、あれ……? パンを買うのではないのですか? いや、店の中を気にしてはいるようですが……>


 女の子の予測不能な出方に振り回され、º*≅¿(ポンチコ)はキリキリとスピンを披露した…… 誰も、見てはいないが。


 女の子の視線の先…… そこは、店内のレジ。


「あんパン3個、カレーパン3個! 今ならガーリックトースト焼きたてですが、いかがしますか…… はい、ありがとうございます!

 ……おつり320円です、それと、こちら新作のクッキーです。オマケしておきますね!」


 ハキハキと動く口元。

 刈り込まれた清潔そうな黒髪、まっすぐな姿勢に、生き生きと動く意思の強そうな目。


 ――― 女の子がじっと見つめていたのは、レジの中で懸命に働く、ひとりの青年だったのだ。


<ええええええっ……!?>


 º*≅¿(ポンチコ)の声にならない叫びなど知る由もなく。


「………………ふぅぅ……」


 女の子は、深々とタメイキを1つ。そして。


 ――― 何も買わず、その場を離れていった。

 ――― 何度も何度も、そのパン屋を振り返りながら……。



 女の子の行動が、意味するところ。


 悲しいかな、それを悟ってしまった、º*≅¿(ポンチコ)は。


<……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!>


 テレパシーを(ほとばし)らせながら、揺れるツインテールの金髪の上で、ただひたすら、宙返りを繰り返すのだった……。




 ¤*≅¶©*@«º*≅¿≡<↑£




「ねぇ、和樹(かず)ちゃん」


「なに? ハルちゃん、今日OKの日?」


「こら。ミワちゃんの前」


 その日の夕食後。

 コーヒーを渡しながら話しかけるハルミのお尻に、嬉しそうに伸ばされたパパの手をぺちり、とはたき、ハルミは、無心にひとり遊びをしている娘に目を遣った。


「あの子、最近、空想のお友達ができたみたいなの」


「へえ…… いいんじゃないか? そういう年齢なんだろ?」


「でもね、その名前が……」


「ヘンなのか?」


「うん、ちょっと……」


 ハルミが言い淀んだのを察知したかのように、タイミング良くミワちゃんが叫ぶ。


「ポンチコぉぉっ! なかない、なかないっ!」



「…………………………。」


 長い沈黙の後、真面目な顔で 「俺は教えてない」 と主張するパパであった。




 一方、当のミワちゃんとº*≅¿(ポンチコ)は。


「あのね、ポンチコ。みわたん、()ってるんだよ」


<ううう…… 何を、でしょうか>


 恋愛相談の、真っ最中であった。


「あのね。にんげんは、にんげんとちか、けっこんできないんだよ!」


<……うっ!>


「だからね、ポンチコは、いくら、あのこのことが(ちゅ)きでも、けっこんできないから、だいじょうぶ!」


<……ううううっ!>


 急な攻撃に、思わずバク転するº*≅¿(ポンチコ)


 4歳児の言葉の刃は、時に鋭いのだ…… まだ、忖度を知らぬがゆえに。


<でも、やはり私は、あの子のことが気になるのです……!>


「うーん…… あいでちゅねえ……」


 ミワちゃんは、考えた。


 大事な友だちのº*≅¿(ポンチコ)のために、一生懸命、考えた。


 そして、ぽん、と両手を打った。


「あのね。ミワたんも、ポンチコのこと、たべちゃいたいくらい、あいちてるからね!」


<ありがたき幸せ……っ!>


「だから、ポンチコがよろこぶこと、いっぱいちゅるんでちゅ!」


<…………! ミワちゃん……っ! わかりました……!>


 感激のあまり、º*≅¿(ポンチコ)は連続3回転ジャンプと高速スピンを披露する。


 最後は、ポーズを決めてフィニッシュだ。


<私ことº*≅¿(ポンチコ)、涙を呑んで、あの子の恋を一生懸命、応援いたします所存!>


「わぁい!」


 パチパチと手を叩く、ミワちゃん。


「ミワたんも、ポンチコと、いぃっぱい、がんばるからね!」




 ――― かくして、ここに。

 º*≅¿(ポンチコ)及びminiな部下たち、そしてミワちゃん4歳による、『金髪ツインテールのあの子を応援し隊』 が、結成されたのであった。 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ポンチコ、つれえなあ、頑張れ! ちっちゃい子が衝撃的な単語(主に下ネタ方面)を発する時の出どころは、大抵、親ではなくこども園でありましょう。 (過去にこども園で「立小便」と「電気アンマ」が広…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ