ハロインカボチャ
70年代も終わりに近づいているこの時代にも、戦前戦中の村社会の人間模様が、当然の常識として戦後の上着を羽織っただけの見せかけ関係が幅を効かすこの職場に、急進的なと言われていた新たな価値観の(それはやはり見せかけの村社会規範を抜け出してはいなかった。)カッコよさと頭の良さそうな話し方を武器に(結局、それも見せかけの薄っぺらな衣装の即席の着替えでしかなかった)熱烈に主張する、それは、政治的にも、文化的にもであるが、そんな者達が仲間を作って勢力を伸ばそうとしていた。
この人達の目的は宗教にも似た政治活動で、主体的のようで、裏にフィクサーがおり、そそのかされている奴らだ。
それは所詮、山に囲まれ、高速道路のひとつもない、新幹線もなく、東京まで列車で半日もかかるこの田舎に訪れた10年、否、20年遅れてやって来た分派の、暇潰し娯楽のように感じられた。
「君はマルクスをよむんだね」と親しげに近づいてきた職場の先輩である青年は、その構成員だ。若いのに細い紙質の青年は、やや額が生え上がり、直ぐにてっぺんまで禿げ、おそらく西洋ハロインカボチャのようになまでほどないはずだ。