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穂高市役所ストリートビュー年史  作者: 十二滝わたる
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時限装置

 病室も含め事務室まで、夏は冷房、冬は暖房により、薄い専用のパジャマ姿で過ごせるように温度調整がなされている。食堂も売店も図書館もある。

 外出が許されれば中心街のデパートまでは、10秒もあれば繋がった専用通路で行き来できる。病気でなければ街のホテルより快適な場所だ。

 しかし、病院の夜は早い。夜9時には消灯となる。夜な夜な整形外科の元気な患者は、車椅子を自分で操作してエレベーターを降ら、外の喫煙所に集まりだす。

 医師のほとんどは喫煙者だ。こんな朝から夜まで、深夜は救急割り当てまである勤務体制での連続は、煙草でも吸わなければやってられない。

 深夜に一人で事務室で残業をしていると、壁ひとつの隔てた隣の事務室から笑い声の電話の会話が聞こえてくる。残業してるのは、僕一人ではなかったらしい。

 どうやら、飲み屋のお姉さんとダラダラと話をしているようだ。それは1時間近くも続いた。戸々にもいるのか、見かけ残業の生活給稼ぎが。

 病院の時間外のチェックは甘い。上司の毬栗は残業などしないし、そもそも、誰が何をしてるかも、残業の中身も把握などしていない。

 一人一人の残業も、莫大なほど多かった。そのこともあり、残業時間は自己申告だ。

 病院の収入のほとんどは診療報酬であるが、支出は人件費だ。この病院での隠れた人件費も含めた実質の人件費は70パーセントに上る異常さだ。

 赤字解消と騒いでも、この現状では普通は簡単には解決しない。

 財務部門では節減に努めているというが、病院ではエレベーターは止められず、空調も変えれず、節減は印刷コピーは両面をなどだけで、焼け石に水だ。

 無意味なそれを一生懸命やっていると毬栗が誉める職員が、隣の飲み屋のお姉さんと無駄な残業代を支払っている奴なのだ。

 しかし、コピーも重箱のすみならば、あいつの残業も重箱のすみだ。

 僕は今、この残業で、このペンと机ひとつので、僕の頭の思考だけで、2年後には一気に赤字を自動解消できる、そんか時限装置を仕掛けている。

 理屈は簡単だ。赤字解決のための縮小予算を作るのだから、収入は厳格に少な目に固くみる

 支出の大半を占める枝分かれした人件費額を巧妙に分からないようにうわずみする。人件費は聖域だ、医師や医療職の人件費がなければ病院はただの箱になる。

 他の支出はおのずと見込まれる収入から人件費を差し引いた範囲で圧縮調整される。

 収入が何かの拍子に増えれば黒字。または支出がコピーは両面でで抑えられれば黒字だ。どちらも捕らぬ狸の皮算用。

 2年後、病院の赤字は一気に解消した。黒字だと院長も毬栗も喜んだ、意味も解らずに。

 僕の仕掛けた人件費が、執行残で残っただけの話だ。醜い予算の奪い合いの前に、大きくかっさらった、それだけのことで、大騒ぎの病院赤字解消騒動は終結した。 



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