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穂高市役所ストリートビュー年史  作者: 十二滝わたる
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毬栗

 毬栗は今日もウトウトと居眠りをしている。公立病院の事務セクションのヘッドの一人ながらも、日頃からなにもすることがない。せいぜい、早朝に出勤しては、施設の回りの草取りをしては、一日が終わる。経営の建て直しの大事があるのだか、部下に丸投げで財務の見方すら覚えようともしない。

 病院内では経営の他にも様々な事件が毎日のように起こるが、決まって「俺、知~らない」とあからさまに言う。

 その癖に、もうひとつの口癖の「俺の権限だ」といいながら、気に入らない奴を悪し様に罵倒する。しかし、その時ですら、考え方の間違ってるのは毬栗なのだ。

 皆、仕事は毬栗を体よく無視して進める。やはり、いないほうが組織的に効率がいい。

 経営は、病院のトップは医師であるとしても、医師は経営の訓練をしては来てない。ついでに、指揮命令の組織運営についても。医師は病院においては絶対の存在だ。医師が居なければ、薬剤師も看護婦も検査技師もなにもすることができない。しかし、君臨する横暴な医師の多さに、不満が溜まる。不満は往々にして事務処理側に向けられる。

 僕は、その向けられた不満を爆破するように対応する。それまでの事務員では考えられなかったように。しかし、爆破は医師に対しても、毬栗に対しても、共産的な労働組合の対しても同じように仕掛けた。

 労働組合主催の職場旅行や職場での宴会などは、いきあいあいと医師、看護婦は羽目を外して心配するほどに騒いでいるが、見掛けだけの仲間で、実のところは、それぞれの不満は常に立ち向かう必要のない、当たり障りないところにこそ向けられた。

 医師は医師であることに、並々ならぬステータスを持つ。愚かな医師だけがそれを常に外に誇示するように表現する。多くの世間体を感じることができる医師は丁寧だ。しかし、根底のプライドは、やぶ医師でも強く持っているものだ。

 経営の改善などと叫ばれ、議会も赤字が続くならば民営化だと脅しをかける。愚かな事務方もそれになびく。

 そもそも、病院の歴史や変遷を知らない議員や人々が、流行りとなった民営化を唱える。

 田舎町になんとか病院をとの思いで個人医師が造った病院は、経営が困難となり廃業するとなったものを、病院を無くす訳には行かないと町が買い上げ、存続させたのが始まりだ。赤字になるのは当たり前だ。

 黒字にするのは、必要としている長期入院を追い出し、ポイントの高い急性の短期患者を期間限度に伸ばして入院させ、不要な丁寧な大事を取った検査と、不要な丁寧な大事を取った高価医療器具を稼働させること、医療に携わる者としての一部の良識を捨てることだ。それで、すべてが暗黙の了解で上手くまわるのならば、それはそれでこの世のなすことだ。

  

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