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穂高市役所ストリートビュー年史  作者: 十二滝わたる
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猪八戒

 いくらバブルの恩恵があるとはいえ、もっと堅実な予算執行が出来なかったのであろうかと思った。日本国中にはこの浮かれを真剣に心配する者はいなかった。少なくとも、穂高市役所にはいない。

 一つの記念イベントをやればいいものを、市民から公募し集めた玉石混淆のアイデアを総て実施すると決定していた。愚かな判断だった。

 市民の思い出となるタイムカプセルの埋設などは小学校の卒業生がよくやっているが、一人前の大人が公費で楽しそうに埋める姿は滑稽の映った。30周年記念だから30年後に掘り起こすとされていたが、担当課長が退職するときに勝手に掘り起こしていたのだから興ざめも甚だしい。

 他の行事についても、町内会や農業青年部のイベント程度のもので思い出すものもない。

 大きな目玉的な記念事業は、屋台博覧会だ。リヤカーで引く屋台からお祭りの夜店のテントからのラーメンからもんじゃ焼きから団子から海鮮どんぶりからの食べ物など、さしずめ上野のアメ横の戦後バージョンの何でもありだ。地元の野菜や果物、一銭店のアタリくじ、数日の夜祭りなら楽しいものだ。

 しかし、当時、お化け会社として東京のマスコミから旅行、広告を牛耳る大手イベント会社は、一月実施すると言う。持たないよ、興味も人も出展する店の側も、誰もがそう思ったが強行された。

 大手とは言え、一人のディレクターのみがその会社の者であり、細々の企画の機動部隊は総て複数の小さな下請け会社だ。それが、どうしようもないような連中の集まりで、委託費を払うのも躊躇うような仕事振りばかりだ。結局、大事なとこは市役所職員が手掛け、あとはこの連中の尻拭いばかりだ。

 さすがに議会は東京の業者に穂高市の税金を持っていかれることに異議が唱えるものがいたが、東京だから間違いないとの田舎者の引け目が仇になったのだ。

 何とか、このイベントの収支はトントンで、赤字にはならなかったのが救いだった。

 課長の猪八戒はこの30周年のプロジェクトをまともに指揮することはなかったが、明らかな失敗でもなかったため、目先の論功行賞の優遇を受けたようだ。仕事もせずに、座ったまま軍艦雑誌を見てれば自然にこうなるか、なにもしないことがいいとはと周囲は自嘲するとともにこの体質を嘲笑った。


 


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