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穂高市役所ストリートビュー年史  作者: 十二滝わたる
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バッタ男

 いくつかのグループに別れてあるプラント建設のセクションのひとつに、庶務担当があった。隣の机の島の係長は、課長も凌ぐと誤解されているこのナメクジ男の見かけの権力に、いつも、モソモソと寄り添い、媚びを見せている。

 頭はてっぺんまで禿げ、僅かに残る落武者ような裾の髪の毛は短く白かった。頬はこけ、毎晩、穂高市役所の周囲にある歓楽街を飲み歩いていた。親父はかって隆盛を誇った町の電気屋で、今では郊外の量販店が幅を利かせているが、当時の三種の神器を、メーカーからの中卸売りとして小売りを束ねて濡れ手に粟であったらしい。

 今では、財を夜の店に貢ながらも、ぼそぼそと贅沢を繰り返している。

 禿げた細く長い顔の男が媚びる姿はバッタのように人間味が感じられなかった。

 このバッタ男の方がナメクジ男よりも年上であったが、しつこく付きまとう夜の遊びのお誘いの効果はてきめんで、高飛車なプライド高いナメクジ男もバッタ男にはさん付けの猫なで声で答えている。

 なんとも気持ち悪い関係で、それ系の奴らかといぶかしげに見られていた。それでも、バッタ男はナメクジ男を盾にして、少し肩を揺らして歩くのだった。

 こうした男色の関係のようなマンツーマンの関係は、至るところで見受けられた。狭い範囲で、そう、このセクション内にすら複数あったのだ。

 それでも、以前、最初に配属された5人組監視コミュニティよりは少しはましなようだ。

 ただ、それなりに不快感は増していくものだ。


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