村を撃て
三顧の礼ほどではないにしろ、熱心なオルグという名の勧誘がハロインカボチャから十数回あった。場所は行ったことのない繁華街の喫茶店や夜の酒場であった。潤沢ではない組織の活動資金であろうに、すべてハロインカボチャがそこの支払いを持つた。勧誘などではない、ワイロのようなものだ。
村社会の掟は、飲ませ食わせのおもてなにを受けたら、受けた者は実質的な子分になるようなことを覚悟しかればならないのだが、結局、すべてに反駁した僕は、彼らの一員となることはなかった。
僕は彼らのことを論破したが、彼等を否定はしない代わりに肯定もしない。少なくとも彼らとの議論では、彼らは理解し得ないでいたが、論理的に否定はするものの、よそでその話しはもしない。
しかし、このことは彼らからすれば、彼らと近親憎悪の内ゲバを繰り返している組織のごとく、シンパからの裏切りとしたのだろう。鉄パイプの攻撃ではないにしろ、同じ市役所内のそれぞれに散らばり、それぞれの関係を持つハロインカボチャの仲間からの、村社会そのもののとも言える嫌がらせが何年ものあいだネチネチと続くことになった。
あの時の彼らは、なぜか多少の、しかし、在るものはかなりの、病的な様相をもっているのではないかと僕には思われた。
しかし、パーソナリティーと村社会の掟との峻別はつかなかった。鼠男やむじな男も同じようなもので、根も葉もない策略的なデマ、妬みからのでっち上げ、小さな部分を掴まえての貶めさせ相対有利の立場をとる、そんな点で彼らとまったく同じようなものだったからだ。
そんなことから、僕はハロインカボチャの仲間からは攻撃を受け、喫茶店に彼らとの出入りしていると鼠男から労働組合に報告され、むじな男からは労働組合活動に熱心だと相当部署に告げ口された。すべてのセクションで、事実無根の噂話が広まる。もっとも、僕だけの話ではない。この田舎組織にいるすべての職員はそんな監視と管理の下で仕事をしている。