青天のへきれきっ
よろしくお願いいたします(*^O^*)。
――――ぴしゃんっ。
確かに今、そんな音が聞こえた。
教室の扉がしまる音?
いえいえ、そんな生易しいもんじゃない。
平手打ち?
そっちの方が近いかも。
「今のって何? 転入生を見た瞬間、脳内に直接響いたような……」
私は教壇の脇に立つ二人の男性を凝視する。
両者とも、とんでもなくイケメンだ。
「嘘! まさか、そんな……」
思わず絶句。
その拍子に私――アリアの柔らかな桃色の髪が揺れる。
私は隣国から来た転入生をよく見ようと、再び紫色の瞳を凝らした。
背が高く、長い金髪を一つにまとめた色香漂う青年は、金の装飾がついた緑色の上着に茶色いトラウザーズを身につけている。その瞳は、綺麗な緑色。
青年の斜め後ろに控える銀髪の男性は、濃い青のトラウザーズとジレ(ベスト)にシンプルな白いシャツ姿。彼は金髪の青年の従者で、珍しい紫と青のオッドアイだ。
「初めまして。ベルウィード国から来た公爵家のディオニス・ヴァランだ。後ろにいるのは僕の従者のレヴィー。よろしくね」
「よろしく……願います」
一瞬の静寂。
そして――
「「キャーッ」」
「「素敵~~!」」
女生徒が、先を争い絶叫する。
留学生は二人ともすこぶるイケメンで、品もスタイルも良い。
おかげでクラスの男子生徒が、たちまち霞む。
その男子、あちらこちらで舌打ちしている。
「チッ、女子め。ちょっとくらい顔がいいからって騒ぎすぎだろ」
「公爵家だから、爵位もいいぞ」
「イケメン滅べ」
一方私は、顔から血の気が引いていく。
間違いない。彼らは――――
ああ、なんてこと!
私は全てを思い出し、歓喜に震えた。
*****
私の名前は、アリア・ファブリエ。
侯爵家の令嬢で、ここ、グランローザ王立学園高等部二年生。
この学園の入学資格は、十二才~十八才の魔法を使える者。
貴重な魔力を受け継ごうと保護したためか、ごく一部を除き、ほとんどが貴族の子女だ。
「授業もマナーやダンス、乗馬や領地経営など貴族の教育に偏っているのよね。学ぶ魔法は自然系。それもこれも、我がグランローザが農業王国だからなんだけど」
農業に自然は必須。
そのため魔法は、火・水・風・土に光を加えた五種類が発展した。
私が得意なのは、風魔法。
「花びらを渦状に飛ばす技術なら、誰にも負けないわ」
ちなみに留学生達は、自然系の魔法が扱えない。
それなのに『魔法を学ぶ』という名目で、グランローザ王立学園に転入してきたのだ。それにはちゃ~んとわけがある。
――出会ったばかりで詳しく紹介されてもいないのに、なぜ知っているかって?
それは私に、前世の記憶があるから。
正確に言えば、たった今思い出した。
感動のあまり叫び出さなかった自分を褒めてあげたい。
――あら? もしかして今、銀髪の彼と目が合った?
「尊いわ。尊すぎて倒れそう」
興奮して鼻血が出ないよう、さりげなく鼻を押さえる。
だって彼らは、私が前世でハマっていたテレビアニメの登場人物そっくりだ……というより、まさかのご本人様。繰り返し再生し、グッズに給料つぎ込んだ私が、見間違えるはずがない!
残念なことに、留学生はみんな敵。
この学園の生徒達を意のままに操り、人質にして我が国を乗っ取ろうと企んでいるのだ。もちろん彼らにも、彼らなりの言い分や信念がある。
私はううーんと、頭を捻った。
――何をすればいいかしら? どうすれば私は、敵の仲間になれるの?