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それぞれに武器を手にしているが、小刀、鎌、手斧と種類がばらばらだった。
敵の動きは、それほどの使い手ではないと時雨は見抜いた。
少なくとも自分よりは格下である。
(これなら、切り抜けられる)
時雨は微笑んだ。
思いもよらない奇襲に一度は死を覚悟したが、運が味方してくれた。
この五人は後悔することになるだろう。
が。
時雨は戦慄した。
軽くかわせるはずの敵の攻撃が、異質であると気づいたからだ。
五人の襲撃者は正確に時雨の身体の五つの急所を狙ってきたのだ。
別々の箇所を五人が同じ速さで斬りつけてくる。
時雨の身体への五人の武器の到達が完全に同じであるために、かわすことが出来ないのだ。
これは、あり得ぬことであった。
どんなに訓練し息の合った者同士でも、必ず「ずれ」は生じる。
それも五人が攻撃を合わせるなど、まさに神業の域。
複数が一人の敵に攻撃する場合は、相手が身をかわせば同士討ちになる可能性もある。
それを恐れて思い切った攻撃が出来なくなるものだが。
五人には、その躊躇が微塵も無い。
互いの武器で命を落とす覚悟があるというのか?
とにかく、尋常ではない攻撃は、現実に時雨に襲いかかっている。
混乱した思考は時雨の動きを停止させた。
結果。
五つの武器は全て、時雨の急所へと到達した。