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虹丸の首筋から液体が吹き出した。
すれ違う際に時雨の小刀に斬られたのだ。
「う…」
虹丸の口から低い声が洩れ、その場に倒れた。
動かなくなる。
「うふふ」
時雨が虹丸に近寄った。
「弱すぎる。まったく、だらしないね」
虹丸を蹴った。
「おや?」
時雨の表情が強ばる。
虹丸の死体に異常を認めた。
首筋を切断した傷から流れ出る液体。
もちろん、血だと思っていたのだが、月明かりの下に浮かびあがった、その色は。
緑色だった。
弱々しい光を放っている。
「これは?」
時雨は動揺した。
理由が分からない。
頭の中が真っ白になった、その刹那。
「!!」
複数の殺気が時雨に襲いかかった。
五人。
いつの間に近づいたのか?
虹丸を簡単に殺した後、時雨に油断があった。
それゆえに、これほどの接近を許してしまったのだ。
自分を中心に、別々の方向から襲いかかった者たちを時雨は瞬時に見極めた。
全員、小柄だ。
ぼろ布を纏い、顔を隠している。