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虹丸  作者: もんじろう
6/105

6

 男が身体を起こした。


「何?」


 女が訊く。


「小便」


 そう言って、男は一糸まとわぬ姿で小屋の外へと出ていった。


 男が小屋の戸を閉める。


 頭上を見上げた。


 男の視線の先には小屋の屋根がある。


 そこから、人間の頭がひとつ、ぴょこんと覗いていた。


 月明かりに照らされた顔は、はっきりと認識できた。


 若い女の顔だ。


 美しく整っている。


 長い髪を後ろで、ひと括りに束ねていた。


 にやにやと笑っている。


虹丸(にじまる)、見つけた」


 女が言った。


 虹丸と呼ばれた男は裸のまま、仁王立ちしている。


 無表情だ。


 否、唇が微かに震えている。


時雨(しぐれ)


 虹丸が女の名を呼んだ。


「お前、独りか?」


 虹丸が続けて訊いた。


 小さな声だ。


 小屋の中の女に気づかれないための配慮か?


「ああ、独りだよ」


 時雨が答えた。


「お前程度の抜け忍を始末するのに人数は要らない。あたし独りで充分さ」


「………」


「里は今、大変なんだよ。お前も知ってる十蔵(じゅうぞう)が裏切りやがってさ」


「十蔵さんが?」


 虹丸の片眉が、ぴくりと上がった。


「お前が里から逃げてすぐに、十蔵も行方をくらませやがった。里は大騒ぎさ。姉様たちは十蔵捜しに駆け回ってるよ」


「………」


「それで、お前を捜す役はあたしにってことさ。とんだ、とばっちり」


「………」


「ぐずなお前にしては、半年も逃げるなんて上出来だったね。何をしてるのかと思えば、こんな所であんな女を抱いてるとは笑える」


 時雨は心底おかしそうに笑った。


 その眼が虹丸を(さげす)んでいる。

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