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虹丸  作者: もんじろう
57/105

57

「お前も気づいていただろう?」


 その通りだった。


 静香は男に気づいていた。


 気配とはまた違う、別の感覚だ。


 何故か男がこちらへ近づいていることは分かっていた。


 不思議な感覚だった。


「石を持つ者同士は、お互いに分かる」


 男の声は何というか。


 無感情で虚ろだった。


 両眼は、いやに淀んでいる。


「どこまで知っている?」


 男が訊いた。


 静香は答えない。


 座ったまま、長刀の柄に右手を置いている。


「石を持っている奴を殺すと石の力を増せるのは知っているか?」


「石の力?」


「そうだ。お前は自分の力を知らないのか?」


「………」


 静香は黙った。


 このところの己の剣技の尋常ではない冴えは。


(緑の石の力ということか?)


 男が一歩、前に出た。


 静香はじっと、その動きを見据えている。


 長刀の間合いに入ってくれば、一刀の元に斬り捨てるだろう。


「俺を斬れば、お前の力が強くなる」


 男はさらに歩を進めた。


 無防備だ。


 まるで静香に斬ってくれと言わんばかりだ。


 男が静香の長刀の間合いに、あと一歩まで迫ったとき。


 嫌な予感がした。


 このまま、この男を斬るのは危険だと静香の全身が声をあげている。


「どうした?」


 男が言った。


「斬らないのか?」


 男は足を止めない。


 静香は、この場を退くことに決めた。

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