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抜け忍になることを可能にしたのは他ならない石の力だったが、半年の間に虹丸の考えは変わっていった。
やはり、この異常な状態を元に戻したかった。
毎夜、夢の中に現れる緑色に輝く石も虹丸を悩ませた。
気味が悪かった。
まるで石が心を持ち、虹丸を呼んでいるように感じたのだ。
虹丸は何故かそちらへ行きたくなる方角をあえて避けた。
その先に、あの石があるような気がする。
それこそが石の狙いなのではないかと思った。
虹丸は元に戻る方法を探した。
そして、猟師の新吉にたどり着いたのだ。
「結局」
虹丸が言った。
「遠回りしていたのか」
「そういうことだな」
別の虹丸が答える。
「夢で見る石が呼んでいる方へ行けば、もう治っていたかもしれない」
「皮肉だな」
違う虹丸が苦笑いした。
「さっきの法師みたいな奴が現れるかも…」
「石を持っている奴は相手にしても意味が無い。出来れば避けたい」
「ああ」
虹丸たちが頷く。
「石の力が無くなったら…」
「………」
「抜け忍狩りにあっさり殺されるかも…」
「それは何とも言えない」
「全力で逃げるだけだ。今のままで居たいのか?」
「そうだな…」
「石を見つけよう」
それきり、虹丸たちは押し黙った。
洞窟の外では朝日が昇り始めていた。
宿場で一泊した静香は、翌朝早く出発した。