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虹丸  作者: もんじろう
53/105

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 それも束の間。


 熱さで目覚めた虹丸は。


 十人になっていた。


 他の九人の虹丸は元々の虹丸が炎に包まれ、焼け死んでいくのを見た。


 不思議な感覚だった。


 意識や知覚は共有しているのだ。


 しかし、苦痛は分散していた。


 焼け死んだ虹丸の痛みは耐え難い、まさに死の痛みだったが、他の九人は自らの意志でその感覚を鈍らせられる。


「痛みを絞る」とでも言うのか。


 逆に知覚を深く共有し、全く同じ人物のようになるのも可能だ。


 九人の裸の虹丸は焼けた虹丸の苦痛は絞り、残った全員の知覚を繋げ、その精度を上げた。


 虹丸たちは一瞬で新しい自分たちの感覚を把握し、行動を開始した。


 生き残らねばならない。


 虹丸たちは協力して、山火事からの脱出を図った。


 途中、七人の虹丸が焼け死んだが、そこで虹丸は自ら念じれば再び虹丸を産み出せることに気づいた。


 虹丸の身体から新たな虹丸が瞬時に分裂するのだ。


 虹丸の人数が減る度に虹丸は新しい虹丸を造り、火勢の弱い場所を探した。


 三十五人の虹丸が犠牲となったが、八人の虹丸が山火事を逃れ、生き残った。


 虹丸たちは喜び、抱き合った。


 夜が明け、周囲の木々が全て燃え尽き、火勢も収まりだした頃。


 虹丸たちは、自分たちの身に起きた異常に手放しで喜べないでいた。


 もはや、常人ではない。

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