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元々、能力は並の虹丸ではあったが、仲間を殺し生き残ったという心の傷が残り、任務にも今ひとつ身が入らなかった。
(俺のような奴が生きていて良いのだろうか?)
そればかり思い、考えていた。
当然、里での虹丸に対する評価は芳しくなくなっていった。
あからさまに侮られ特に時雨の姉妹たちには蔑まれた。
それでも虹丸は文句ひとつ言わなかった。
もちろん、下忍が目上の者に抗議するなど里の掟では許されなかったのだが、虹丸は仲間を殺して生き残った自分への罰のような思いがし、酷い扱いを素直に受け入れていた。
虹丸が十九のとき。
書状を届けるだけの任務を命じられた。
簡単な仕事だった。
道中で虹丸は、とある山の山小屋で一夜を明かそうとした。
夜更けに山火事が起こった。
何が原因かは分からないが大規模な山火事である。
虹丸は炎の中を逃げ惑った。
あれほど罪の意識に苛まれていたのに、心の底から生きたいと思った。
虹丸は緑色に輝く不思議な石を見つけた。
そこでふと、六郎を殺したときを思い出した。
(俺が何人も居たら…六郎のために死んでやれたのに…今だって助かるかもしれない)
そう思った次の瞬間、炎が虹丸を襲った。
(死にたくない!!)
緑の石が光を増して、虹丸の身体へと入ってきた。
虹丸は気を失った。