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虎然は虹丸の死体を襲撃者たちへと投げつけた。
空いた手で籠から刀を取り出し、敵を迎え撃つ。
虹丸の死体にぶつかった者は地に落ち、それ以外の襲撃者たちは虎然の刀の餌食となった。
敵を一人倒す度に虎然のなまくら刀は折れ、あるいは虎然自身が叩き折り、次の刀を取り出してはまた敵を倒す。
その一連の動きを虎然は、正確かつ迅速に繰り返した。
「供養、供養!」
虎然が笑う。
落ち着きを取り戻していた。
最前列の襲撃者たちは全て虎然に屠られた。
虎然の六本腕に死角は無い。
一本の手は籠を持っているため、実際に敵を斬っているのは五本の腕だが、それでも襲撃者たちを近寄らせない。
だが。
まだ終わらない。
虎然を何重にも包囲した敵は次々と襲いかかり、その攻撃は止まる気配を見せない。
二十人。
三十人。
四十人。
虎然の顔から笑顔が消え、「供養!」という声も出なくなった。
敵の技量は大したものではない。
が、恐ろしく連携が執れていた。
百人近い野盗たちを斬っても息ひとつ乱さなかった虎然が、徐々に消耗し全身に玉のような汗を噴き出している。
「おのれ…」
虎然が、うめいた。
五十人。
七十人。
百人。
息は乱れ、心臓が早鐘の如く鳴った。
汗が滴り、緑色に輝く虎然の両眼に入ってくる。