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虎然の腕が、ぬっと伸びて虹丸に掴みかかった。
虹丸の身体が真上に跳んだ。
虎然の両手が空を掻く。
虹丸は背面にきりもみし、虎然の頭上へと落下した。
その右手には、いつの間にか小刀が握られている。
落ちる勢いのまま、虎然の頭に突き立てる狙いだ。
「!?」
小刀の刃先が虎然に当たる寸前で止まった。
虹丸の両手両脚が四本の屈強な腕に捕らえられていた。
虎然の腕である。
虹丸は虎然の背中より生えた四本の腕に掴まれたのだ。
万力のような怪力で虹丸の手脚を放さない。
虹丸は四肢の自由を奪われた。
「供養、供養」
虎然が笑う。
足元にある籠から、空いている腕で、なまくら刀を一本取り出した。
両手で刀を握り、錆びた刀身を身動き出来ない虹丸の頭に叩きつけた。
頭骨のひしゃげる手応えが、はっきりとあった。
虹丸が、がくりと頭を垂れた。
動かなくなった。
虎然は刀を拳で折り、その場に投げ捨てた。
「良い供養だったわい」
満足げに言った。