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影が続けた。
「石を持つ者が石を持つ者を殺せば、相手の石を取り込めるのは知っておるか? わしは三人、殺した。おかげで力が増したわ。お前も石を狙っておるのか?」
「………」
「途中で石を持っておった漁師の話を聞いたが、どうやら誰にも取り込まれておらん石をすでに石を持つ者が取り込めば、力を失わせることも出来るようじゃ。せっかく授かった力を捨てるとは、とんだ愚か者。わしには考えられん」
影が大声で笑った。
「わしは刀供養をしながら、旅をしておる。人を供養する坊主はごまんとおるが、刀たちを安らかにしてやれるのはわしだけじゃ。もっともっと供養してやるためにも、力を増さんとなぁ」
「………」
「わしの名は虎然。お前の名は?」
「虹丸」
虹丸が、ようやく口を開いた。
「そうか。自分で訊いておいて言うのも何じゃが、わしは人の名前が覚えられんでのう」
「………」
「すぐに殺してしまうからじゃな。お前の名前は、どうかのう?」