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静香は肌を露にしていることも頓着せず悠然と立っていたが、その顔には満足げな様子は微塵も無かった。
瞳の緑の光も消えている。
(違う)
静香は唇を噛みしめた。
足元に何かが当たった。
異国の少年の落とした地球儀だ。
先ほど少年が「日本」と言って指差した部分が偶然、静香の視界に入った。
静香は地球儀を拾い上げると食い入るように見つめた。
(これが日本だと!?)
静香の中で何かが。
弾けた。
虹丸が山道を進み、全滅している野盗たちの亡骸に遭遇したのは夜更け過ぎだった。
旅人の風体の虹丸は野盗たちの死体を検めた。
皆、殺されている。
死体の側には一体につき一本ずつ、折れた刀が落ちていた。
座り込んだ虹丸の背後に大きな影が立った。
「お前も気づいておるじゃろう」
影が言った。
野太く汚い声だ。
「石を身体に取り込んだ者同士は、お互いの居場所が分かる。まあ、慣れは必要じゃが」
影の頭部で二つの緑色の光が輝いている。