35/105
35
黒馬の鞍には、やたらと長い槍と大きな盾が取り付けられていた。
どちらも西洋の物だ。
もう一人の方。
こちらも洋装ではあるが、平時の物らしくひらひらとして、静香から見れば馬鹿のように見える格好であった。
赤くまん丸な帽子を被った十代半ばほどの少年だ。
肌が真っ白で瞳が青く、帽子から出た髪の毛色が金色なところから間違いなく外国人であると分かる。
少年は右手に球状の物を持って、頭上に掲げていた。
球は色分けされ、外側をぐるっと囲むように細い木の枠が取り付けてある。
枠は土台へと繋がっており、そこを手に持って球の部分を動かすと、くるくると回り始めるのだった。
「これは地球儀なる物!!」
少年が大声で言った。
細い身体から出る高い声は、聴衆の耳によく響いた。
驚いたことに流暢な日本語だ。
「我らの立つ大地を型取った物」
これには人だかりから失笑が洩れた。
この時代のほとんどの者は地球の形など知らない。