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「供養、供養! 刀供養じゃ!」
地獄だった。
何人もの人を殺めた野盗たちが、女子供のような悲鳴を上げ殺された。
虎然の緑色に光る両眼は全体を見回し、逃げようとする者を見つけると巨体とは思えぬ速さで追いつき始末した。
一人殺す毎に正確に一本の刀が折れた。
最初の刀の雨で死んだ者も怪我した者も虎然はわざわざ、それらを害した刀を引き抜き、もう一度死体や怪我人に叩きつけた。
例外は無かった。
我郎は。
小便を漏らし、腰を抜かしていた。
領主たちをも悩ます勢力を誇った自分たちが、こんな形で終わりを迎えるとは。
(牙次が殺られたときから運が逃げちまった)
我郎は四つん這いの情けない格好で、その場から逃げだした。
よちよち歩きの赤子のように、なかなか進まない。
我郎の首根っこを何者かが掴んだ。
軽々と持ち上げられる。
我郎の視点は高くなり、辺り一帯に倒れた仲間たちの死体が一望できた。