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一気に現実に引き戻された新吉が後ろを振り返ると、すぐそばに狼の群れが居た。
狼たちは小石の出す光を警戒している様子だったが、新鮮な獲物を諦めるつもりはなく、新吉を包囲し始めた。
絶望的だ。
(俺がこいつらの仲間なら、生き残れるのに…)
ふと、新吉は馬鹿なことを考えた。
緑色の光が強くなった。
(!?)
新吉は手に持った小石を見た。
小石は消えていた。
緑色の光を発しているのは新吉の腕だった。
右手の肘の辺りまでが光に侵食されている。
「うわーっ!!」
新吉は叫んだ。
理解不能な事態が自らに起こっている。
新吉は気を失った。
どれほどの時が経ったのか。
目が覚めると昼間だった。
最低でも一夜は越えたことになる。
新吉は自分の無事に何より驚いた。
狼たちは獲物を襲わなかったのか?
それに、あの小石。
新吉は慌てて右手を確かめた。
「ひゃっ!?」
情けない声を上げた。
右手が、いつも見慣れたものではなかったからだ。