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狼の吠える声が聞こえた。
そう遠くはない。
新吉を恐怖が襲った。
必死に雄叫びと逆の方向へと歩く。
全身から冷や汗が吹き出してきた。
狼の声が後ろから迫ってくる。
明らかに複数の声だ。
脚の痛みは増し、息も苦しくなってきた。
それでも進まなければ、食い殺される運命が待っている。
(?)
前方に何かが光っていた。
暗闇の中で柔らかい緑色の光が輝いている。
恐怖に混乱した新吉は、吸い寄せられるように光の方向へ進んだ。
あまりに急いだため、枝で造った杖がへし折れた。
新吉は地面に倒れた。
それでも光へと這い進む。
ついに光の元へとたどり着いた。
光は小石から発している。
親指大の小石。
浅い穴の中心で下半分は地面に埋まっていた。
新吉は無意識に石に手を伸ばす。
石は温かくて、まるで生き物の如く脈打つ。
(これは何だ?)
少なくとも新吉は今まで見たことがない。
突然、間近から狼の声がした。