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虹丸  作者: もんじろう
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 右手で柄を握ると、凄まじい速さで鞘から抜いた。


「ぎゃっ!!」


 五平が叫ぶ。


 いったい、長刀がどのような軌道を描いたのか?


 静香の居合いは今までの人生で一番の冴えを見せて、五平の股間を斬った。


 五平は後方に倒れ、転げ回った。


 静香の母は真っ青な顔で身体を動かすことさえ出来ず、只々、静香を見ている。


 静香は初めて人を斬った。


 その動揺も彼女の怒りを静める役には立たない。


 激しい憎悪のこもった瞳が母をにらみつける。


 静香の頬を伝うものがあった。


 涙だ。


 何故、涙が出るのか静香本人も分からなかった。


「静香」


 娘の涙を見た母が、ようやく口を開いた。


 母の声が自分を呼んだとき、静香の感情が爆発した。


 (きびす)を返し、家の外へと飛び出す。


 泣きわめきながら、走った。


 どこへ行くのか考えてはいない。


 とにかく、少しでも離れたい。


 めちゃくちゃに走り続けた。


 どのくらいの時が経ったろうか?


 息を乱し、足の力も尽き、静香は転倒した。


 山の麓の森の中で伏せたまま、静香は泣きじゃくった。




 その日、猟師の新吉(しんきち)は運に見放されていた。


 いつものように鹿を狩るために山中に入り、新吉だけが知る狩り場へと向かう途中、山道から足を滑らせ転げ落ちたのだ。


 幸いにも命は取り留めたが右脚をしたたかに打ち、自由に動けなくなった。

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