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母が何をしているのか知るのが恐ろしかったが、もう黙認は出来ないと思った。
静香は床を抜けだすと家の外へと出た。
月明かりの中、何処かへと向かう母の白い着物姿が見えた。
母は、すぐそばにある五平という百姓の家へと入っていった。
五平は三十を過ぎたばかりのがっしりとした男で、ずっと以前から静香の家族とは交流があった。
寡黙だが、優しい男だった。
静香の胸騒ぎが、さらに増した。
静香は五平の家へと歩きだした。
足が鉛になったように重い。
五平の家に着くと小さな窓から、そっと中を窺った。
闇夜の暗さに慣れてきた静香の眼が抱き合う男女の姿を捉えた。
静香は頭を強打されたような衝撃を受けた。
足元がふらつき始め、吐き気が襲ってくる。
(何だ?)
母と五平が今どのような関係にあるのか、直感的に理解した。