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静香は十二歳になった。
母譲りの美貌はすでに花開き始め、出会う者をはっとさせるほどだった。
身体は細身ではあったが、しなやかな筋肉がついている。
村の男たちの誰一人として、木刀を持った静香に勝てる者は居なくなっていた。
父の剣術指南は、それでも続いた。
静香がどれほどの強さになれば満足するのか?
厳しい修行を課してくる父の眼に、近頃は何か憎しみのようなものまで感じる。
父の独善さには拍車がかかり、母との口論が日常茶飯事になっているのも静香には気がかりだった。
ある夏の暑い日。
父は死んだ。
朝方に玄関先で倒れているのを母が発見した。
後頭部を何度も殴打されたらしく、血の海の中にうつ伏せの状態だった。
村人たちは家に侵入しようとした賊と父が出くわして、殺害されたのだと結論づけた。
静香は悲しみに泣き崩れたが、疑問も感じていた。
賊は片手片足とはいえ、武芸の心得のある父の背後に、どうやって回り込んだのか?