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相手の構えは不可解だ。
戦意があるのかも怪しい。
牙次が鉄棒を両手で振りかぶる。
敵の動きは理解できないが、これを好機と考えた。
あとは鉄棒を振り下ろすだけで終わる。
「死ね!!」
牙次が声と共に致命の一撃を繰りだした。
同時に女剣士も動いた。
ひねっていた上半身を一気に戻し、その勢いに乗せて腰の長刀を引き抜いたのだ。
牙次は見た。
振り返った女剣士の両眼が緑色に輝いているのを。
振り下ろされた鉄棒に長刀の刃が激突した。
刃はまるで柔らかい物のように鉄棒を切断すると、そのまま進んだ。
すなわち、牙次の顔を鼻の辺りから斬り飛ばした。
顔の上半分を失った牙次は意味をなさない声を上げ、どうっと倒れた。
「違う!!」
そう言った女剣士の双眸から緑色の光は消えている。
「私が斬りたいのは…」
そこで女剣士は口を閉ざす。
表情は暗い。
長刀を鞘に納めると再び歩き始め、山道から去っていった。