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虹丸  作者: もんじろう
12/105

12

 牙次は、ゆっくりと女剣士の前へと立ち塞がった。


「待ちやがれ」


 牙次が凄んだ。


 女を通して面子が潰れることへの恐れもあったが、女剣士に対して全く勝算が無く対峙したわけでもない。


 自信があった。


 女剣士は興味無さげに、氷のような冷たい視線を目前の大男に投げかけていたが、牙次が右手に持っている物に眼を止めた。


 それは女剣士の腰くらいの太さがある、鉄の棒だった。


 牙次が元鍛冶屋の仲間に造らせた物で、今まで気に入らなかった相手の頭をいくつも叩き潰してきたのだ。


 女剣士の身体など苦もなく破壊するはず。


 そう牙次は思っている。


 女剣士が左足を一歩、退いた。


「お? 怖くなったか?」


 牙次が笑った。


 否、女剣士が一歩退いたのは逃げるためではなかった。


 下半身は牙次に向けたまま上半身をひねり、後頭部を見せた。


 これでは女剣士からは牙次の動きが確認できない。


 女剣士の右手は左腰に差した長刀の柄を握っている。


「?」


 牙次は首を傾げた。

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