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「私は短い時間ですが、あなた方を観察しました。私の欠片が落ちた先では、常に強い者が弱い者を虐げていましたよ」
「………」
「私がしたのは、あなたがたと同じ。何を責められることがあるでしょうか?」
虹丸は唇を噛みしめた。
激しい怒りが身体を震わせていた。
「私の身体はやっと、この星から飛び出せるところまで回復しました。あなたに会うことは二度とないでしょう。最後にあなたには、お礼を言っておこうと思ったのです」
「出ていけ…」
虹丸が言った。
「私が離れれば、あなたの身体は元に戻ります。今までのような無茶はしないでくださいね」
「この国から出ていけっ!!」
虹丸が吼えた。
「さようなら、虹丸」
声が終わると同時に、虹丸の周りの景色が変わった。
気を失う前に居た場所だ。
足元に十蔵の遺体がある。
そして、虹丸の身体はひとつだ。
虹丸の頭上には先ほどの空間と同じ、緑色の光を放つ巨大な球体が浮かんでいた。




