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そう、四人の影から顔を覗かせたのは、別の男だった。
一瞬の迷いの後。
静香が斬撃を放つ。
(この男…)
空中にある、唯一違う男の顔に静香は見覚えがあった。
(十蔵という男では!?)
十蔵の両眼が緑色に輝く。
そして、静香は。
自らの斬撃で、自らの首をはね飛ばした。
静香は死んだ。
操られる直前に放った静香の斬撃が、四人の虹丸と十蔵の身体を横一文字に切断する。
日の本への斬りつけは止み、辺りは突然、静寂に包まれた。
静香の首が地に転がり、その上に首のない身体が倒れる。
十蔵の上半身も地に落ちた。
「十蔵さん!!」
大勢の男、すなわち虹丸が十蔵に駆け寄った。
十蔵の瞳の緑の光は弱々しく、消えかけていた。
「十蔵さん!!」
虹丸たちが呼びかける。
そのとき。
静香の死体から、輝く大量の緑色の光が飛び出し、十蔵の上半身へと注ぎ込まれた。
「がはっ!」
十蔵がうめき、瞳の光が強まる。
静香の石の力が、死にゆく十蔵の身体に、しばしの命を与えたか。
「虹丸」
十蔵が呼んだ。
「十蔵さん!」
虹丸たちが答える。
十蔵が苦しそうに右手を上に伸ばす。
指が空を掻いた。
周りの虹丸たちが、その手を掴もうとする。
「ふふふ。虹丸、お前の手が多すぎるぞ」
十蔵が笑った。