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虹丸  作者: もんじろう
10/105

10

 声も出せずに時雨は死んだ。


 時雨の死体の周りに五人の襲撃者が集まった。


「こいつを隠さないと」


 一人が言った。


 男の声だ。


 全員がぼろ布を纏っているので、表情は窺い知れない。


「小屋へは誰が行く?」


 違う男が言った。


 五人はお互いに沈黙した後、一斉に手を挙げた。


「やめよう。意味がない」


 一人が言った。


 他の四人は黙って頷いた。


「俺が行くから、後は頼む」


 そう言って、一人がぼろ布を脱いだ。


 小柄な百姓姿の男が現れた。


 男は続けて着物を脱ぎ、全裸になった。


 そして四人から離れ、小屋へと歩を進める。


 戸を開け、中へと入っていく。


「あんた、ずいぶん長い小便だったね」


 女の笑い声が小屋の中から聞こえてきた。




 長刀が閃く。


 その度に鮮血が飛び散った。


 三人目の仲間が何も出来ずに斬り倒されるのを見て、多勢の男たちもさすがに顔色を変えた。


 白昼の山道で臆面もなく旅人を襲うこの男たちは、百人以上からなる野盗の一味だった。


 山道は国境に位置し、双方の国を治める戦国大名は度重なる戦に勢力を弱め、お互いに掌握しきれずに居た。


 そこにつけ込んだ野盗たちが昼夜を問わず暴れまわり、縄張りを拡大してきたのだ。


 男たちにとっては日常の略奪のひとつのはずだった。


 それが今、野盗たちに囲まれた美貌の剣士の様子は、どうだ。


 涼しい顔で長刀を構え、襲ってくる野盗を無造作に三人、斬って見せた。


 息は、まったく乱れていない。


 包囲している野盗たちの誰一人として、剣士の太刀筋を確認できた者は居なかった。


 こうなると圧倒的多勢でありながら、誰も前に踏み出せなくなる。

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