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その夜、いくつもの小さな流れ星が地上へと降り注いだ。
我々の知る戦国とは違う戦国。
深夜だというのに、まるで昼間のような明るさだった。
熱い。
ときおり吹く強風で、辺りの火の勢いはさらに増していく。
木々が燃える、ばちばちという音が耳を突く。
焦げ臭い匂いが息を吸う度に鼻を襲う。
かといって、口から吸えば尋常ではない熱気が喉を焦がす。
熱い。
否、もはや痛い。
小柄な男は大規模な山火事の中を活路を求めて右往左往した。
年齢は十七、八か?
男と呼ぶには若いが、さりとて少年とも呼べない。
山小屋で一夜を過ごし、明朝には出発するはずだった。
男は忍びであった。
今回の仕事は書状を運ぶだけの簡単なもの。
それが油断に繋がったのか?
迂闊にも深く眠ってしまい、何も気づかぬうちに、このような状況に陥ったことは忍びとしては下の下であると言えた。
致命的なしくじりである。
少しでも火勢の弱い方へ弱い方へと逃げるうちに忍びは皮肉にも、どんどんと山の奥深くに進んでいた。
火の粉が飛び、仕事の道中、怪しまれぬために着た旅人に見える衣服に降りかかってくる。
必死に手で払いのけなければ燃え上がるだろう。
炎に負けず劣らず煙も充満していた。
煙は忍びの眼を刺激し、涙を流させる。