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「あ、ありがとうございます」
「どうも」
二人はお盆にのせられたコップを手にとった。苺を象ったコップだった。可愛いねと木下に言おうとしたが止めといた。
「皆遅いね」
林は既にオレンジジュースを飲み終えてコップをお盆の上に置いた。ポケットからハンカチを出して口を拭った。
「そうね。でもまだ時間じゃないし」
「まぁね。それより今日、何をするんだい?」
そう聞かれた木下は待ってましたと言わんばかりな表情になって言った。
「ひ、み、つ」
軽いウインクをして林に言った。こと人はよくわからないと畠山は思った。
木下の携帯が鳴った。バイブレーダーとともに歌が流れた。女性の声だったが誰の何の曲か全然見当がつかなかった。
「宮くん達、来てる。國男、さっそく案内してきてあげて」
端っこにいた國男はさっと顔を上げた。
「はい。その方はもう来ていらっしゃるのですか?まだ何も反応してませんが」
「今歩いてるの。もうすぐ着くから、玄関で待ってて」
「かしこまりました」
國男は二つコップがのったお盆を持って部屋から出て行った。
「もう、皆来てるって?」
畠山は言った。少し胸が高鳴った。今まで意識しないようにしていたが無理だとわかった。
「高原さん、来るってよ」
林は畠山の肩に手を置いた。今現在の話ではなく、内面的な部分に焦点が当てられているとすぐにわかった。
「…どうして知っている?」
畠山の心臓が今にも破裂しそうだった。誰にも話したことは無い。なのに何故林が知っているのだろう。
「長年の付き合いだとわかるんだよね。そういうの」
にやっと笑っていた。畠山の心臓の鼓動はさらに速くなった。木下も二人の話を聞いていたらしい。
「高原さん、まだ一度も彼氏できたことないんだよー」
「そ、そうか。別に興味はないけど」
畠山は黒い革製のソファに深く腰かけた。
「疲れた…。早く帰りたいね。もう。東京にいると岐阜がやけに田舎染みて見える」
「その、早く帰りたいって言うのは高原さんが来て緊張するから?そして岐阜が田舎に見えるというけれど、東京よりは品があると思うわ」
「そうだな。確かに東京は品が無い」
林が納得した。腕を組み、液晶テレビをマジマジと見ていた。
「テレビ、見たい?」
「ああ、少し」
木下はテレビをつけた。その液晶テレビはスクリーンのように大きく迫力があった。ドアがノックされた。ノックの音は今日初めて聞いた。そしてドアが開いた。