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魔法世界の魔想剣士―クリエイター―  作者: 磯野カツオ
第1章 希望の翼
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第1章-3 『知りたいこと』

 朝日が昇り、もうすぐ朝を迎える。

 そんな時間にユーリは一人、宿屋を抜け出していた。

 別にどこかへ行く予定があったわけではなかった。ただ目が覚めてしまったから、少し散歩でもしようかと思い至っただけだ。


 だから驚いた。

 まるで自分の行動を予測したかのように、宿屋の前に立っていたいのりを見つけた時は。


「……あ、おはようユーリ君」


「お、おはよう。どうしたの? こんな朝早くから」


「んー? 誰かさんがまた覗きをしないか見張ろうかなーって思って」


 いのりは両手を望遠鏡の筒のようにまとめると、それを左目に当ててユーリへと向ける。


「だ、だからぼくたちは覗きをしようとしていたわけじゃなくって――」


「はは、分かってる。冗談だよ」


 背中に冷や汗をだらだらと流しながら動揺するユーリを見て、いのりは満足したように微笑を浮かべる。

 小悪魔のようなその微笑は色々な意味で破壊力満点だった。


「本当はちょっと目が覚めちゃったから散歩でもしようかなって思っただけ。モモちゃんがお風呂に行っちゃったから一人でね」


「ぼくと同じか。えっとじゃあ……一緒に行く?」


 女子を誘うことに慣れていないユーリは恐る恐るといった様子で尋ねる。対して問われたいのりは待ってましたと言わんばかりの輝く笑顔でそれに答える。


「うん!!」


朝日が昇り、もうすぐ朝を迎える。

 そんな時間にユーリは一人、宿屋を抜け出していた。別にどこかへ行く予定があったわけではなかった。ただ目が覚めてしまったから、少し散歩でもしようかと思い至っただけだ。

 だから驚いた。

 まるで自分の行動を予測したかのように、宿屋の前に立っていたいのりを見つけた時は。

「……あ、おはようユーリ君」

「お、おはよう。どうしたの? こんな朝早くから」

「んー? 誰かさんがまた覗きをしないか見張ろうかなーって思って」

 いのりは両手を望遠鏡の筒のようにまとめると、それを左目に当ててユーリへと向ける。

「だ、だからぼくたちは覗きをしようとしていたわけじゃなくって――」

「はは、分かってる。冗談だよ」

 背中に冷や汗をだらだらと流しながら動揺するユーリを見て、いのりは満足したように微笑を浮かべる。小悪魔のようなその微笑は色々な意味で破壊力満点だった。

「本当はちょっと目が覚めちゃったから散歩でもしようかなって思っただけ。モモちゃんがお風呂に行っちゃったから一人でね」

「ぼくと同じか。えっとじゃあ……一緒に行く?」

 女子を誘うことに慣れていないユーリは恐る恐るといった様子で尋ねる。対して問われたいのりは待ってましたと言わんばかりの輝く笑顔でそれに答える。

「うん!!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 街は静まり返っていた。元々この世界に住んでいる(?)住人達は勿論のこと、恐らくいるであろうユーリ達以外のギルドの姿も見えない。


「皆、まだ寝てるんだね」


 街を見回しながらいのりが呟く。

 時間を考えれば当然なのだが、元の世界では早朝でも何かしらが動き回っているので、この静けさには未だに慣れないのだ。


「皆、か。……この世界に住んでいる人達はちゃんと寝てるのかな?」


 立ち止まり、そんなことを尋ねてくるユーリにいのりは訊き返す。


「急にどうしたの?」


「いや、変な事を言ってるのは分かってるんだ。でもさ、いのりだって思ったことぐらいはあるだろ? この世界がまるでRPGの世界みたいだって」


「それは……うん。いつでも思ってる」


 死んでも生き返るような世界。例えそれに慣れることができたとしても、やはり違和感はいつまでも拭えなかった。


「もしもこの世界がRPGの中なら、そこにいる人間は眠ったり、食事したりはしないんじゃないか? ただそこで自分の役割を果たすだけなんじゃないか? ってそんな考えが浮かんじゃうんだ」


「でも、それなら私たちはどうなるの? 私たちには確かに前の世界の記憶を持ってる。つまりこの世界の住人じゃない。そんな私たちは何でこの世界に……?」


 いのりからの問いかけに、ユーリは、「ぼくにも分からないよ」と首を振る。


「この世界が何なのか。なぜぼく達はこの世界にやって来たのか。なぜ……ぼくにこんなスキルが授けられたのか」


 ユーリは手を広げ、そこに剣を出現させながら言う。 


 この世界で目覚めた時に自動的に与えられたスキル。自分で選ぶことはできず、何が現れるのかは完全にランダム。

 謎としか言いようがないスキル。そして、世界。


「それをぼくは、知りたいと思うんだ」


 誰もが――勿論ユーリも――この世界には満足していた。しかし同時にこの世界への疑問を忘れたこともなかった。


 元の世界に帰りたいと思っているわけではない。むしろこの世界にずっといたいとすら思っている。しかし永住したいと思うには、この世界には謎が多すぎる。


「……そうだね。私も知りたいかも」


 昇ってくる朝日を眺めるユーリの横顔を見つめながら、いのりは同意の言葉を口にする。


 


――知りたかった真実が、望むものとは限らない。



 これから数時間後、ユーリ達は思いもよらない方法でこの世界の真実を知ることになる。

 

 しかしそれは決して彼らの望むものではなかった。


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