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序
強い風が吹いていた。
ごつごつした岩の表面に這うように生える灌木の枝を揺らし、強い風が小石を巻き上げる。
その場所は、大陸の西の果て、と言われる切り立った断崖だった。
冬の夜明け近く、二人の少年は家を抜け出して、この場所に来ていた。
雲海の向こうに見える上ったばかりの朝日を眺めながら、銀色の髪の少年は言う。
「俺は将来、天空神ラスティエのいると伝えられる、空の座、に行く。その時はお前も一緒だぞ? レイン」
レインと呼ばれた黒髪の少年は強い風の中でうなずく。
「はい、ライ様」
登ったばかりの太陽に照らされ、雲海が虹色に輝いていた。
それは少年二人の幼い日の約束だった。
その時のライはこの世に何も怖いものなどないと信じていた。
ライはずっと幼い頃の約束を忘れず、今も空の彼方にあると伝えられる楽園、空の座に行くことを夢見ている。