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三聖剣物語  作者: なつ
&c...   --そして彼女は--
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 Chapter XXIX  扉

 ヴァンデルト国の歴史は古い。誰もその原始を知らないほどだ。森の東側に興ったその国は、それが緩衝ともなり、その勢力を一気に拡大させた。メメルから遅れること数年のうちに、森の西側にアナタスが作られた。メメル同様、高さに力を求めた都市構造である。現在のアナタスにも、その都市構造はわずかながら残されている。それは居住地区から隔離され、アナタスの一角に集められた。否、そここそがかつてのアナタスなのだ。人びとが集まるにつれ、次第に居住地区が発達していったのだ。かつての人びとは、アナタスのもつ意味を知っていたかもしれない。だが、もはやそれは失われた。アナタスの意味を知るものは、ヴァンデルトの王族にしかない。だが、もはやそれも失われた。

 最後の国王ウル=V=ディバルは、国力のほとんどを内に注いでいた。その純粋な目的は、賢者の石をその手で作り上げることであった。そしてそこに、かつて封印されたものを宿すことであった。そのための犠牲は計り知れない。その賢者の石の宿主となったルナ=ルト以外にも、数多くの犠牲があった。その犠牲は、贖われるのであろうか。


「ワインハルトが言っていたわ」

 アリス=リスタット=ハナユメはレディー=ファングをあやしながら、キャロットとソラ=ルトを振り返った。

「初めからメメルが落とされることは想定されていた。もしその時がきたら、国の皇子たちをつれて、アナタスに来ることになっていた。ヴァンデルト国の国王たちがなんでそんなことを想定できていたのかは、もう分からないけど。事実そうなったわけ。だから、まだヴァンデルト国がすべて滅んだわけじゃない。確かヴァンデルト国には二人の皇子と一人の皇女がいたはずです」

「だけど、この惨状では……」

 ソラは辺りを見回す。アナタスの町はほぼ崩壊している。瓦礫が連なり、前ここを通ったときに目に付いた高い建物たちのいくつかは、すでに倒れている。

「確かに、期待薄ね」

「アナタスの歴史もメメルと同じくらいある」

 ソラは見渡しながら続ける。

「確か、居住地の外にメメルの図書館のような構造の病院、学校、祭殿がある。アナタスを遠くから見ると、その尖塔がよく目立っていたから、そちらの建物はまだ残っているはずだ」

「ワインハルトもそんなこと言ってたわ」

「そうみたい」

 キャロットがププの頭を撫でる。

「ププも、あっちにまだ建物が残されているって」

 南を指してキャロットが二人を振り返った。二人は頷く。そして三人は歩きだした。

 瓦礫は次第と少なくなり、辺りは古い建物に覆われてくる。ヴァンデルト国立図書館と確かに似た構造の建物だ。それが続いている。

 ププの先導に従い、三人はその中の少し開けた場所についた。その一角にあるこぢんまりとした建物、もしここに観光に訪れるものがあったとしたら、おそらくこの存在に気が付かないだろう。風景の一部でしかない。

 高さは二メートルにも満たないだろう。その正面には両開きのドアがついている。

「これは?」

 キャロットが扉に刻まれている文字に気が付いた。扉や建物は埃や塵に汚れているというのに、なぜかその文字だけははっきりとしている。誰かが汚れを落としたかのようだ。

「この文字、見覚えがある」

 ソラがその文字を見るために扉に近づいた。

「確か、ヴァンデルトの図書館で見た。子守唄の近くに記されていたのに似ている、多分、同じものだ」

「これはイルカの古代文字ね」

 アリスはキャロットを見た。だが、キャロットは首をかしげる。

「ラ リット クル エマ ダルダ ファン ドール」

「封印の、名前は、永遠の、自由?」

「読めなくても意味は分かるのね」

 どうしてだろうと思いながらも、キャロットは頷く。アリスは片手を伸ばし、扉に手をかけた。だが、鍵がかかっているようで扉は動かない。

「ファンドールって、ヴァンデルトのことだよな」

「そうね」

「ヴァンデルト国の歴史はメメルから始まったはずだから、その頃にはやはりイルカ国は存在していたのか」

「どうだろう、当時イルカが国という概念を持っていたか分からないから」

 今度はソラが扉に手をかけた。不思議なことに、扉はほとんど何の抵抗もなく手前に開く。

「わたしは用なしってことかしら」

 アリスは頬を膨らませて、扉の先を睨んだ。階段が地階へと伸びている。建物同様にかなり古めかしい。そっと手を伸ばすと、その手が弾かれる。

「あれ?」

 再び確かめるようにアリスは手を伸ばした。確かに弾かれる。まるでそこに壁があるかのようだ。

「どうしたの?」

「分からない。なんだかわたし拒絶されてるみたいで」

 ソラが手を伸ばしても、何も起きない。続いてキャロットが同じように手を伸ばすが、やはり何も起きない。続いてププが中の様子をうかがうように嘴を伸ばすと、それは弾かれた。

「何よ、これ。嫌がらせかしら?」

「とりあえず、オレたちが中の様子を見てくる。それまで待っていてくれ」

「わたしがいないと……」

「何とかする。ラブ=オールもあるし、この剣、あたしにぴったり」

「……ううん、分かった」

 しぶしぶとアリスは頷く。

「レディー=ファングを預かっておくわ。すぐに戻ってきてね」

 アリスに手を振ると、ソラとキャロットはその扉の先へと進んだ。二人が入り口に立つと暗くなりそうなものだが、何故か先が見渡せる。下にも光源があるようだ。

 アリスは二人の姿が見えなくなるまで、そこで待っていた。

 と、扉が勝手に閉まる。抑えようとするが、間に合わない。再び開けようと試みるが、やはりそれもかなわない。どうやら、ここで待つしかないようだ。

 アリスはレディーの額を撫でた。レディーは泣くことなく笑っている。

「すぐママたち戻ってくるからね。待ってようか」

 小さくアリスは囁いた。

 それにププが一声鳴いて答えた。


 さて、階段が終わると先は大きなホールになっていた。その大きさを表現するのは難しい。自分たちが今いる側以外、まったく先が見えないからだ。前も、右も、左も、上も。白色に輝く石のせいかもしれない。視界がぼんやりと白く、距離感がつかめない。

 だが、それでもソラはある一点を見つめた。先に何か見えるわけではない。

「なんなのかしら、ここ」

「すごい濃い匂いだ」

 これは、メメルを出て森の中を歩いていたときに感じた匂いに近い。鉄のような、だが、それよりも濃い。

「血だ」

 アナタスでもそれは漂っていたはずだが、それ以上に死臭がきつかった。それゆえに今は目立つ。

「急ごう」

 ソラはキャロットを確認すると走り出した。そのソラの手を、キャロットは握り一緒に走る。ブロードソードを片手に持っているはずだが、ほとんどその影響もない。

 視界の先に、僅かな隆起が見受けられる。地面が膨らんでいるようだ。おそらく、段が高くなっているのだろう。さらにその上に何かが立っている。

 そして、その段の近くに倒れている人影が見える。

 そして、その周りに広がる、血。

 三人だ。

 倒れている。

 女性一人と、男性が二人だ。その女性にソラは見覚えがあった。

「メリッサ皇女!」

 叫び、近寄る。だが返事はない。右肩と左胸が激しく損傷し、そこから血が溢れた後がある。

 見れば、分かる。もはや、生きていない。

「じゃあ、あの二人は皇子?」

「いや」

 ソラは一瞥し首を横に振る。

「違う。皇子なら見れば分かる。多分、メリッサ皇女の護衛だと、思う」

 その二人も、もはや生きていない。

 明らかだ。

 と、段の上に据えられていた椅子が、突如白い光を放つ。ソラとキャロットの意識は自然とそこへと向かう。

 光は次第に凝縮してゆき、翼をもった人へと形を成す。椅子に座り、足を組んでいる。キャロットはラブ=オールを両手に持ち、下段後方に構えた。ソラはその隣りで、その光の顔の辺りを睨む。

「ルナ!」

「わたしはわたし以外のなにものでもない」

 光は消え、羽の生えたルナの姿へと変えた。

「お兄ちゃん、わたしの忠告を覚えてなかったかしら?」

「オレが西へ行くのには理由があった」

「ア=ディーヌ、希望が溢れるところ。ここに希望はない」

「オレがお前のために選んだ道だ。お前を目覚めさせるために」

「わたしは眠ってなどいない。常に意識は覚醒していた。数多の意識がわたしの中に渦巻いていて、それをコントロールできなかっただけのこと。でも、それを越えるためのきっかけさえあれば簡単なことだった。わたし自身の意識もそこに溶かしてしまえば、それでおしまい。あとは第三者に意識を譲るだけでわたしは目覚めることができるのだから」

「お前はまだ目覚めていない」

「これほど気持ちのいいことってないわ。わたしの中にある意識は、純粋な少女たちだけのものではない。かつてイルカが封印したものもある。混在してもなお、共通の意識がある。支配と被支配。深く望む、すべての掌握。わたしにならできる。ここも、西方世界も、すべてわたしが支配することができる」

「お前はまだ目覚めていない」

「すべては意識の差異でしかない。お兄ちゃんなら分かると思うけど、目覚めていないのは、お兄ちゃんのなかのわたし。わたしはすでに目覚めている」

 天使は椅子から立ち上がり、ふわっと羽を動かす。

「認識することね」

「あ、あたしの子は? どこにいるの?」

「さあ?」

 そして天使は、ソラとキャロットの前に降り立った。




 刹那、光が扉から溢れ、アリス=リスタット=ハナユメはとっさに目を覆った。レディー=ファングが小さく声をあげる。

「何?」

 次第に光が収まっていく中で、アリスは気がついた。今、目の前にあったはずの二メートルほどの建物が、その場から消えていた。

 跡形もなく、けれども、初めからそこに存在しなかったかのように。自然な形でなくなっていた。

「嘘。ひ、め?」

 確かめようとするが、もはやそこに何もない。確かめようもなく、確かな、事実として消えてしまった。





 キャロットの手が汗ににじむ。

 ソラ=ルトは、ルナ=ルトの姿をした天使と対峙し、動けない。

 天使は笑っている。

「お兄ちゃんには何もできない。そんなの明らかだわ」

「オレは、確かに非力だけど」

 ソラは顔を上げ、まっすぐルナを睨む。

「だけど、それでも進みたいんだ」

「無駄なことね」

 ふわっと体勢を一度低くすると、天使はソラの懐へと移動する。瞬間過ぎて、ソラには動きが見えなかった。

 だが、体だけは無意識に恐怖を覚える。ソラは後方へ飛び退き、両手を前に突き出した。

「そう、すべて無駄なこと」

 ソラの手が天使を突き抜ける。違う、そこに存在などなにもない。だが、天使はそこにいる。天使の手が、ソラの手首を持つ。

「どれだけ願っても届かない。哀れなお兄ちゃんだこと」

「ソラに触るなー!」

 刹那、キャロット持つブロードソードが天使を下方から切り上げる。天使はソラの手首を離すと、さっと飛び退いた。

 だが、切っ先は天使の胸部をかすめる。

「なっ!」

 鮮血がその胸部から飛び出る。天使は胸に手を当て、自らの傷を確かめ、驚愕する。

「なんだ、その剣は!」

「ラブ=オールよ」

「今よ、お兄ちゃん」

 天使の口から、搾り出したような声がもれる。

「やめろ、抵抗するな」

「キャロット」

 キャロットは上方にあがったラブ=オールを振り下ろした。肩から剣はその腹部にまで達した。

 その瞬間、天使は激しく光りだした。ソラもキャロットも、その目を覆う。

 自然と二人は手を取り合い、互いを確認しあった。


 光は広がり、完全に二人を覆い尽くす。時に強弱があるようで、闇とそれは溶け合う。覆っていた目を開けても、風景に変化はない。闇の中の残光だけかもしれない。見たのは強い光だけだというのに、多色に溢れた闇だ。

「キャロット?」

「大丈夫」

 立っている感覚も失われ、大理石と思われていた床もすべて失われた。


 長い時間だったのが、それともひどく一瞬のことだったのか分からないが、再び足に地の感覚が戻る。硬くない地面、長くない草が生えているようだ。

 光も次第に小さくなり、辺りの風景も自然なものへと変わっていく。離れたところは鬱蒼と茂る木々に覆われていて、近くには小さな川が流れている。一つの岩が突出してあり、そこから水が湧き出ていて、周りに小さな泉を形成している。どうやら川はそこから始まっているようだ。

 そして、目の前には巨大な扉があった。否、あるのか疑わしい。空気に映るように存在しているようで、厚さが感じられない上、向こう側も透けて見えている。だが、わずかに開かれた扉の間の空間だけが、まるで裂けている。その先は闇だ。

 その僅かな隙間が次第に細くなっていく。

 扉が閉じて、いく。


「な、なんだ、お前ら、どこから、現れて、え?」

 ソラとキャロットがとっさに振り返ると、腰を抜かしたように地面にへたり込み、こちらを指差している青年の姿があった。

「なにが、だって、ここは……」

 その青年の後ろに、小さな天使があった。小さい、実に小さい。ただ白く光っているだけで、そこにルナの姿は見受けられない。その光は、ゆっくりと移動し、青年と重なる。

「な、が、あ、ああああ」

 青年の口から、言葉になっていない声がもれる。苦しいのか喉を抑え、目を見開く。そして、その目が赤く充血してゆく。

「それを、渡せ」

 少女の声と青年の声が重なる。真っ赤な青年の目が、キャロットの右手を睨む。ラブ=オールを見ているようだ。

 青年は獣のように、そうまるで獣だ、体勢を低くすると、両手をだらんと垂れさせる。

「キャロット」

「ソラ」

 二人は互いの名前を呼ぶ。

 刹那、青年は二人へと突進する。瞬間的にソラとキャロットは、離れるように青年を避けた。青年はそこで動きを静止させ、顔をそらせてキャロットを覗き込む。真っ赤な瞳……あの獣たちを髣髴とさせる色だ。とっさにキャロットはラブ=オールを構える。

 が、青年はすでにキャロットの懐にあった。

 腹部に衝撃を感じ、次の瞬間何かがキャロットの手首を打つ。手からラブ=オールが離れ落ちる。

 青年はラブ=オールを手にした。だが、その重さに剣先は地面に刺さる。

「キャロット!」

 ソラはキャロットの側に駆け寄り、その手首を確認する。外傷は見られないが、内出血しているかもしれない。腹部も、最悪傷が開いたかもしれない。

「大丈夫」

「逃げよう」

 キャロットは頷く。

 ソラは空を見上げ、太陽の位置を確認する。僅かに傾いている。それから辺りの風景、木々の陰へと視線を移す。ソラはキャロットの腕を持ち走り出した。

 西へ。

 二人は小川を跳ねて避けると、後ろを一度振り返る。追ってこようとしているようだが、剣の重さに走ることができないようだ。

 これなら逃げ切れる。

 ソラは再び前を向くと、前方に広がる木々の間へと駆け込んだ。


 この森は広いことで有名だ。大きさはヴァンデルト国首都メメルと、そこに接する森の大きさをはるかにしのぐ。人間が立ち入り、観光地としているのはほんの一部分に過ぎない。森の端にある湖と、そこへ繋がる舗装のされた道だけが、その森の自然を奪っていた。だが、その湖へと集まる多くが、その作られた自然こそが自然だと信じていた。ピクチャレスクと称し、貴族を中心としてそこに自然を見出せることが、彼らの一つのステイタスとなっていた。

 それゆえ、一たびその道をはずれ少しでも森の奥へと足を踏み入れるならば、形作られていない自然がそこには広がっている。つまり、木が互いに競うように生え、草も好き放題に伸びている。足の踏み場さえもなく、太陽の光さえも高い木々に遮られることが多い。都市では見たこともない花が咲き、また獰猛な動物が人間であれ獲物として襲い掛かってくる。まさに弱肉強食の、自然な世界が広がっている。


 だが、ソラもキャロットもそこがどの森だが知ろうはずもない。まさかこれほど深遠な森に自分たちが迷い込んでいることなど、思いもつかない。ただ、逃げたい一心だった。

 ソラの耳に残る、ルナの最後の言葉。キャロットの手に残る肉を切る感覚。

 あのときルナは目覚めていた。ソラにはそれが分かったし、もちろんキャロットも理解していた。だからといって、あのとき他にどうすることができただろうか。彼女を切る必要などなかっただろうか。それは分からない。だが、もはや過ぎてしまったことだ。戻りようもない。

 それならば、否、だからこそ、西へ。

 希望が眠る地へ。


 森はどうしようもなく深い。すでに二人の前に道はなく、鬱蒼と生え茂る木々と草とが二人の行く手を遮る。上を向いても空の様子がわからない。すでに自分たちがどこにいるのかも分からない。戻れといわれても、もはや不可能だ。そんな森の奥深くに、いつの間には二人は取り残された。

「やばいな、このまま日が暮れると」

「大丈夫よ」

 不安な顔つきのソラに対してキャロットは気軽に言った。顔には笑顔もある。

「武器もない。獰猛な獣に襲われたら最後だ」

「襲われなければいいのよ、大丈夫」

「なんで、そんなに落ち着いてられるんだよ」

「待って」

 キャロットは唇に人差し指を当て、続いて中空を見つめた。手をつないでいなければ、すぐにでもはぐれてしまいそうなほど、丈の長い草に覆われている。

「大丈夫、道はないけど、安全だから」

 ソラはもうずっと昔、キャロットと初めて会った頃を思い出した。真っ黒な衣装を身に纏い、そこから病的なまでに白い腕が伸びていた。ときおり立ち止まり、顔を傾ける。彼女のもとにププが降りてきて、そっと囁く。

「自然が私たちを守ってくれる」

「分かるの?」

「あたしの特別な能力は二つあるの。一つは先代から継いだ能力、もう一つ次代に残す能力。賢者の石は必ず二つの能力を持っているのよ」

 確かに、キャロットには二つの力が備わっている。

「時を留める」

「そう。あたしの心に呼応するように。でも、それは自発的な力ではない。あたしが次代に残すために選んだ能力はもう一つのほう」

「ププと会話する」

「ププはそんな年寄りじゃないわ」

「じゃあ」

「あたしの力は生物の声を聞くこと。植物も動物も、彼らの気持ちを読み取ることができるの。ププは、監視の塔に囚われていたときに出会った友達よ」

 満月の夜に、あの天に開けられた窓に羽ばたいた姿。

「だから安心して、今あたしたちに危害を加えようとしているものはない。あたしには分かるから」

「分かった」

「もう少し歩けば、少し開いたところがある。そこで休めるから」

「結局、オレの知識なんてなんの役にもたってないよな」

「そんなことないよ。ソラのおかげであたしも、あたしたちも本当に助かってるんだから」

 二人の姿が遠ざかっていく。

 密林の中を、手をつなぎ、ゆっくりと動いていく。


 西へ。


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