序
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一つ。
東と西。
はるか昔、世界は繋がっていた。
それが失われたのは戦いの後のことだ。
何と何の戦いだったのか、詳しいことは分からない。
けれども、その戦いで東と西の繋がりは途絶えた。
それもはるか過去の話だ。
お互いに東と西の存在など忘れるほどに。
西には西の、
東には東の、
それぞれの世界ができた。
再び交わることなどない。
それが幸せだった。
※※※※※
二つ。
「Wanted!!」
わざと古臭い書体で書かれている。その下にある人相書きは墨で少女の絵が描かれている。丸い顔立ちに大きな目、肩に掛からないくらいの髪を、左耳のところで軽く束ねている。どれほど似ているのかはなはだ疑問だ。
「ショコラ=ロリータ。21歳。王国の宝を奪い現在逃亡中。髪は太陽の色。目は深い茶色。背丈はあまり高くないが剣を使いこなす。少女と思って侮るなかれ。あやかしの術も使いこなす」
簡単な説明書き。そしてその下には、
「10000$」
国王のお膝元、ターシャの町。広場にあり、酒場にあり、号外もあり。あらゆる者がそのお触れを見た。
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そして、三つ。
「強く生きなさい」
家を出るとき、反対していた母が言った。
「もう帰ってこなくていいぞ」
扉に背を向け、酒を飲みながら父が言った。
「……」
涙を流しながら、少年は何も言わなかった。
大陸では戦争がさらに拡大していると聞く。そんなときに大陸に行きたいなど、彼は何を思ったのか。反対されて当然だった。勘当されて当然だった。それでも、彼は家を出る決心をした。
一袋の荷物と、護身用の短剣と。
あとは勇気を携えて。